猫と海辺に暮らす翻訳コーディネーターの阿鼻叫喚な日々を綴る日記。

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捨て猫チィちゃんの思い出
それは私が中央線沿線に住んでいる頃のこと。

私は毎日、駅からまっすぐにのびる商店街のアーケードを通って通勤していた。
このアーケードの最後には魚屋さんと八百屋さんがあり、そこから住宅街が
続いている。

ある日のこと、この八百屋さんで買い物を済ませた私は、店の横にうずたかく
積まれた野菜用の段ボールに目をやった。すると何気なく見ている私の目の前で、
段ボールが動いている。人の気配を感じた私がその背後に回り込むと、電信柱
を背もたれにし、捨てられたリカちゃん人形のように足を放り出して座り込む
ホームレスのおじさんを発見した。

がっくりと頭を落とし、身じろぎ一つしない。果たして息をしているものか
心配になった私の目の前に、おじさんの服の中から小さな小さな子猫が出て
きた。おそらく生まれて1ヵ月程の子猫は、短いしっぽをピンとたてて
胸を張り、私に向かって一生懸命に挨拶をしている。

すると死んだようになっていたおじさんがポケットからカニかまぼこを
取り出し、愛おし気に子猫をひざの上に抱き寄せてかまぼこを与えている。

私は勝手にこの子猫をチィちゃんと名づけ、以降、日々掛け捨ての愛情を注ぐ
ことになる。愛想のいいチィちゃんはすぐに商店街の人気者になり、体を
撫でるのに順番待ちができるほど。時にチビちゃんだったり、ミーちゃんだった
りと色々な名前で呼ばれながら、いつも元気に返事をしては頬ずりされて
イヤイヤをしている。魚屋と八百屋の間を行ったり来たりしながら、日々の
糧を得ていた。

特に魚屋のおじさんはチィちゃんのことが大好きで、わざわざイラストの
入った小さなお茶碗を買ってきて、ドライフードをあげていた。

そんなチィちゃんも、夜になると決まって帰る場所がある。段ボールの陰に
座るホームレスのおじさんの膝の上にのってグルグル言いながら眠りに
つくのだ。

お盆休みを田舎で過ごした私は、久しぶりの商店街を走り抜けていた。
チィちゃんが元気かどうか気になって仕方がなかったのだ。まっすぐなアーケード
を抜け、八百屋さんの前へ。なぜか魚屋さんは閉まっていて、チィちゃんの姿も
ない。八百屋のおばさんに、ここの猫ちゃんはどうしたんですか、と聞く私に、

「三日前に車にひかれて死んじゃったのよ」

という。私はこの瞬間、息ができなくなってしまった。慌てて隣を見ると、ホーム
レスのおじさんの段ボールもない。その所在を聞く私に、おばさんは、

「子猫がひかれた日からどこかに行ってしまったわ」

という。あれほどまでに可愛がっていたチィちゃんがいなくなってしまった今、
おじさんのことが心配で仕方がない。その日、アーケードに荷物の搬入で入って
きた軽トラックがそのままチィちゃんを轢き殺す。まっすぐに動かなくなった
チィちゃんの亡き骸を抱いたホームレスのおじさんは、泣きながらチィちゃんを
埋めていたという。

「それはどこですか」

道端にある街路樹のプラタナス。その下にチィちゃんは埋められた。そばに行くと、
踏み固められた土の隅にほんの小さな盛り土。こんなにも小さい体、と思う。この世に
世に生を受けてたった2ヵ月しか生きていないのに。

茫然としたまま何気なく木の裏に目をやると、そこにはチィちゃんの小さなお茶碗が
置かれ、その上には新しいカニかまぼこがパックのまま供えられていた。

「ああ、おじさんが...」

そう思った次の瞬間、私は声を出さないように走り出していた。

自分の部屋まで、誰にも見られませんように、クシャクシャでボロボロの顔を
見られませんように。


野良猫の平均寿命は3~4年と言われている。猫エイズをはじめとする感染症や
栄養失調、交通事故や人間による虐待。チィちゃんなんか2ヵ月しか生きることが
できなかった。ただそれでも、商店街のみんなに愛され、ホームレスのおじさん
に拾われて幸せだったのだと思いたい。

もし今猫を飼いたいと考えていらっしゃる方がいたら、是非、獣医さんの里親
募集や関連NPO、また保健所で殺処分を待つ猫たちの引き取りを含め、1匹でも
救ってあげてほしいと思う。

我が家の猫たちも以前4月21日の「家の猫たち」で書いた通り、皆、捨て猫
でした。血統書はありませんが、今やかけがえのない家族です。

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子猫のチィちゃんに哀悼の心を捧げます。
ホームレスのおじさんもきっとその場所には
いたたまれなかったのでしょうね。
人生にも猫生?にも哀しいことがいっぱいありますね。
一本の葦 | URL | 2013/06/26/Wed 14:03 [編集]
ウォーりリックさん、こんばんは。

私も、ペットの猫を亡くした経験が
2回もあります。
とても、辛いよね。
小判鮫のコバンちゃん | URL | 2013/06/26/Wed 18:15 [編集]
Re: タイトルなし
一本の葦様:いつもコメントをありがとうございます!

あのホームレスのおじさんにとって捨てられた子猫はどれほどの価値を
もっていたのかと思います。傍目にみてもカニかまぼこを買えるような感じでは
なかったもので。チィちゃんのおかげで地元の人たちとつながることができて
いたので、チィちゃんの死とともに皆の前から姿を消したのだと思います。
私にいろいろなことに気づかせてくれた出来事でした。

本日の滝の文章はとても大きい感じがして、いつもながら素敵でした!
ウォーリック | URL | 2013/06/26/Wed 22:35 [編集]
Re: タイトルなし
小判鮫のコバンちゃん様:いつもコメントありがとうございます!

コバンちゃん様のブログに書き込みをして戻ってきたところ、こちらにも
コメントをいただいていて行き違いになってしまいましたw

我が家の三匹もすでに皆10歳を超えていて、ペットフードコーナーで
高齢猫用という文字を見る度に不吉な想像を頭の中から掻き消します。

今を大切に、一緒に楽しい思い出をつくろうとだけ考えるように
して噛みつかれる毎日です。またブログでペッパーとペペロンの年を
教えてください。
ウォーリック | URL | 2013/06/26/Wed 22:43 [編集]
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| | 2015/04/17/Fri 23:16 [編集]
Re: お変わりありませんか?
◯◯マ◯ター様

コメントありがとうございました!
色々とご心配かけてすみません。
年度替わりということもあって仕事が忙しかったことに加えて、猫が
一人末期のガン、もう一人が甲状腺の病気で病院を行ったり来たりして
いました(ご推察の通りです!)。

そろそろ落ち着き始めたので、少しずつ皆さんのブログを見に
行き始めたところです。ご紹介いただいた「ごんやま」さんのところ
にも行ってみます。

どんな辛いことがあったのでしょうか?でも頑張り屋のどさんこですから、
きっと奈良の空の下でも大丈夫です。きっとすべてがうまくいくと
信じています。

拙い過去記事まで読んでいただいてありがとうございます。
そろそろ復活できそうなので、また宜しくお願いします。

ご心配ありがとうございました!

ウォーリック | URL | 2015/04/18/Sat 06:35 [編集]
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| | 2015/11/29/Sun 03:49 [編集]
Re: ちゃのりんです
もうすぐ始動しますね!!
ウォーリック | URL | 2015/11/30/Mon 23:19 [編集]
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