猫と海辺に暮らす翻訳コーディネーターの阿鼻叫喚な日々を綴る日記。

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翻訳コーディネーター
私の仕事は翻訳コーディネーター。あまり耳馴染みのない職業かと思うので、
少し補足説明。

主に翻訳会社や一般企業の海外部門などで、翻訳やDTPを含むプロジェクト全般を
扱う担当です。クライアントとの打ち合わせ、翻訳の発注、納期、校正を含む品質管理。
DTP後の版下校正、デザインディレクションや言語的なコンサルタントに続き、各種
クレーム対応から翻訳業務そのものも担当します。

また、客先への納品後は請求書や納品書の処理や新しいフリーランス翻訳者の採用
まで、ありとあらゆる「翻訳と外国」関連業務をこなします。会社によっては
(私もそうだけど)、外国語のテレビCMやビデオナレーション、通訳の派遣も担当
したりします。

英語のキャッチコピーを考えている最中に電話が入り、クロアチア語の問い合わせを
処理する傍らで、デザイナーからタイ語のカンプチェックがくることなど日常茶飯事。
言語も仕向け地も媒体もバラバラの業務を一つのプロジェクトに取りまとめて
管理していきます。

どんなに 納期が厳しくても品質レベルを保たなければいけないのはどの業界でも
当然のこと。特にこの業界では客先が言語のチェックをできない分、その責任は
重大です。

その一方で、逆に翻訳に口をはさんでくるクライアントほどタチの悪いものもなく、
相手が「お客様」だけに本当に困ってしまう。

社内では「とても英語ができる」言語の大家とされている部長さんや、TOEIC900
アップのやり手お局が担当窓口になると本当に大変。断っておきますが、TOEIC
スコアがいくら高くても英語は話せませんし、翻訳が上手い訳でもないんです。
その証拠に翻訳者や通訳という職業がちゃんと成り立ってそれぞれに需要があるの。

こうした口をはさむ人々の代表作をここに少々ご紹介します。

◯某有名メーカー常務様の英語キャッチ

(会社名) makes love!

おそらく「(会社名)は愛をつくります」的な日本語に、ご自身が理解できる
英単語をあててきたものかと思いますが、それにしてもmake loveはいただけ
ない。

これを日本語にすると、

(会社名)は、セックスします!

キャーッみたいな。プロとして丁寧にご説明させていただき、この件は取り下げて
いただきました。

◯某携帯電話「春号カタログ」に寄せられたご担当のヘッドコピー

Spring has come, bling bling!

この日本語は、

春が来た、ブリンブリン!

一体何のことやら。この「ブリンブリン」は安っぽい宝石やゴールドのかまぼこ
指輪を只けばけばしく着飾ってキラキラしているニュアンス。決していいイメージ
ではないのですが、おそらくご担当様は春のキラキラ感を出したかったのだと推測。
企業イメージに品位は不可欠だと思うのですが。

無碍にお断りもないので、ネイティブと代案を考えてお伺いをたててもやっぱり
強引にブリンブリンを推してくる、ちょっと困ったちゃんでした。

◯某観光ガイドブック担当者

The Japan's biggest rape field!

この日本語は、

日本一でっかいレイプ現場!

rapeは強姦の意味と同様に、菜の花の意味もあります。もともと「日本最大の
菜の花畑」と言いたかったものと推察。同じ発音で同じスペルなものだから
ややこしい。菜の花rapeの代わりにfield mustardやcanolaといった別名を
代案にたててみたものの力及ばず、このまま「日本一のレイプ現場」になって
しまった。印刷されたガイドを見て、世界中からマニアが訪れたことと思い
ます。

この他にも日本語から他の言語に翻訳される時点で、ものすごい勘違いのせいで、
本来の意味とは途方もなくかけ離れた文章ができることしばしば。たとえば日本語
にはアクセントがないなんていう痛い学者がいます。勿論、欧米風の強弱アクセント
さえないものの、高低アクセントはしっかりあるの(「端」と「箸」はちがう)。
でも、これをカタカナやひらがなで文書にすると、時に外人には区別がつかない
ことが...そしてまた終わることのない阿鼻叫喚ループが繰り広げられてく。

◯某ファッション雑誌の中国語版翻訳

パステルのトップスに白のパンツを合わせて。

この「パンツ」がくせもの。フラットにパンツと発音するとズボンの意味だけど、
「パンツ」の「パ」が高いと下着のパンツでしょ。中国人のおじさん翻訳者は、
トップスをトップレスに読み間違えた上、パンツは白ブリーフの訳にしてくれて
チェックしていた私は倒れそうになった。そもそもファッション雑誌にトップレス
が出てくると思うのかしら。

こうしたエピソードは数限りないのだけど、それでも私はこの仕事が本当に好き。
「この英語やフランス語にどういう日本語をあてようか」「いっそ文章自体を
リライトする?」などと、ネイティブと一緒に言葉をいじっているときが至福の
ひととき。ちょっと入賞したり、褒められたりすると豚のように舞い上がる
私がいる。

どの言語にもそこはかとない深みが感じられて、その国の文化のすべてがつまった
宝箱。日本語を含め、その言語を使う人々、歴史的背景や文化といったものに
敬意を払いながら、少しずついいものに仕上げていく過程が楽しい。

また機会をみて素敵な誤訳の世界を展開したいと思います。

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