猫と海辺に暮らす翻訳コーディネーターの阿鼻叫喚な日々を綴る日記。

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Slava — 天国の歌声
今日は風が強い。

窓の外は春の嵐。遅咲きの桜も、荒れ狂う嵐の中に舞い散り、初春の終わりを告げている。
窓ガラスをたたく風のように乱高下を続けた私の心、こういう時こそクラシックが慰めて
くれるということを忘れていた。

こんな日は外に出ることなく、部屋のCDラックを開く。
バロック曲集の中からお気に入りのCDを選び、トレーにのせて音楽を待つ。

パッフェルベルのカノン、G線上のアリア等の有名どころに続いてアヴェマリアがかかる。

イントロが始まると同時に全身を包む戦慄にも似た感動。
繊細な振動を伝える空気の流れが、まるで目に見えるかのように部屋中に広がる。
風に吹かれた雲が流れ、日差しに陰影をつくり、そして、その影が部屋の中を
通り過ぎていく。

その幻影の中に流れるアヴェマリア。

古今東西、数多くの作曲家がこのテーマで曲をつくり、そして、多くの国籍の歌手が
歌い継いできた。

この中でも、私の一番のお気に入りはカッチーニのアヴェマリア。
そして、この物悲しい曲調にもっともふさわしいのは、女性でも男性の声でもない、
カウンターテナーのSlavaの声。なぜに彼の歌う聖母マリアはこれほどまでに哀愁が漂う
のだろう。

もし本当に天国というものがあって、そして、この現世でそれにふれることができると
すれば、それは彼の歌うアヴェマリアの中にある。
彼のCDが日本でヒットしていた事実を私は知らなかった。その年をはさむ数年間、私は
日本にいなかった。とある場所でこの声を耳にした瞬間、一体、誰の歌うアヴェマリアか
確かめざるを得ない衝動に駆られた。

ロシア出身、ベラルーシ出身といろいろな出自があるものの、彼の顔を見た瞬間から、
スラブ系の人ではないことを実感した。おそらくまたユダヤ人の血が混じっているのでは
ないかという直観。

その後、wikiでイスラエル国籍を取得とあったのを見て、なるほどと思った。

彼が公表しているかどうかわからないので、ここで彼の出自をどうのこうのという気もない。
そんなことはどうでもいいことなのだ。

芸術の素晴らしいところは、ロシア(もしくはベラルーシ)といった、宗教自体がない
ことになっていた地で、ユダヤ人の声で奏でられたカソリックの聖女の曲が、こうして
やはりキリスト教とは関係のない地球の裏側の日本で、私の心を揺さぶるということ。
まさにこの事実につきると思う。

言葉や文化、宗教やイデオロギー、人種や性別といったありとあらゆる「ちっぽけな差」を
超越したところの極みに、彼の歌声があるのだ。

街を歩いていても、偶然つけたテレビから流れてきても、彼の声が心に届いた
瞬間から、私の魂の離脱が始まる。不用意にも涙がとまらず瞬時にうつむきながら、
思わず神様にありがとうを言いたくなる、そんな力をもった曲が
このSlavaのアヴェマリアです。

http://www.youtube.com/watch?v=4SuBRsPt1Mo

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