猫と海辺に暮らす翻訳コーディネーターの阿鼻叫喚な日々を綴る日記。

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超女優ー市原悦子
以前の日記「あの人は今」で少し書いた通り、私はインパクトのある女優さんが
好きだ。そんな中でも他の追随を許さない圧倒的な存在が、女優市原悦子さん。
家政婦シリーズで有名な彼女の演技力は、そんじょそこいらのぽっと出の女優さん
とはまず格が違う。ドラえもんの大山のぶ代さんを同期にもつ俳優座の出身で
演技力の基礎は折り紙付き。ドラマ、舞台、映画から声優までオールマイティーにこなす
大女優。たとえバイプレーヤーとしてほんの少しの出番でも、彼女が出演するだけで
作品全体に悦子ワールドが広がる、共演者泣かせの逸材だ。

トウのたった場末のストリップ嬢、犯罪者の息子に「殺して」とせがむ母親、
何でもお構いなしの家政婦から戦場の息子を待つ母の役まで、あるときは聖母、また
あるときは娼婦のように、スクリーンの中で「女」を演じる。その実力は声だけが
勝負の子供向けアニメ「まんが日本昔ばなし」で実証済み。桃太郎からヤマンバまで
声色一つで演じ分けてしまう。そもそも彼女の本職は声優ではなく、女優さんなのだ。

私が初めて彼女の演技に打たれたのは小学生の低学年だったと思う。
その日たまたま早く家に着いた私は、母がいないのを幸いに花王愛の劇場に
チャンネルを合わせた。世にいう昼メロで主婦向けになかなかエロいものもあり、当時
我が家では視聴が禁じられていた番組の一つ。心躍らせながらチャンネルを合わせると、
何だか地味で汚いおばさんがとぼとぼと道を歩いている光景だった。もっとエグイ
やつを期待していた私はテレビを消そうとしたのだが、なぜか気になって仕方がない。

チャンネルに手をかけたまま立ち見を続ける私の目に、家の中に駆け込む老婆の姿が
映る。戦争に行く前の息子の姿が記憶の中でオーバーラップし、今日も会えなかった
息子への思いがこみ上げた老婆は、部屋に着くなり畳に突っ伏して亀のように
丸くなる。やおら座布団を二つ折りにするや、それを抱きしめて嗚咽をもらす。
その後、声とも叫びともつかぬ慟哭で部屋の中をゴロゴロと転がり始めたのだ。

演技に圧倒された初めての体験。目頭がツーンと痛くなり、そして一体どこにこんなに
涙が隠れていたのかと思うほど、とめど無い激情と感動の揺さぶり…
二葉百合子さんの歌で有名な「岸壁の母」を演じる女優市原悦子だった。その日から、
昼ドラの始まる時間になるとテレビの前に正座をして彼女の登場を待つ小学生の
私がいた。もはや彼女が出てくるだけで涙がとまらなかった。

「まんが日本昔ばなし」の声が彼女であることを母から聞いた私は、それ以降、
女優市原悦子のファンになることを心に決めて以来ウン十年、今もかわらず彼女を
支持し続けている。

映画「青春の殺人者」では、実際にあった親殺し事件をもとに、水谷豊演じる青年に
殺される母親役を好演。包丁をもって悦子様に向かい、シーツをかぶせる水谷豊に一言。

「痛くないようにして」

そしてゆっくりと包丁を突き刺す豊。断末魔の喘ぎの中で、悦子様。

「痛いよぉ。痛いよぉ…痛くないようにしてって言ったのに」

このシーンは、昨日の戸川昌子さま同様、私の心に深く突き刺さりトラウマと
なって今にいたる。

かと思えばドラマ「泣いてたまるか」では渥美清さんの昔の恋人役で
ストリッパーに。この二人がカップルというだけですでに癒されるのだけど、
舞台に立つ悦子様のストリッパーにはもっと癒される。彼女が舞台に上がるやいなや、
お客たちから大ブーイングの嵐。「きたねえなっ」「ババア引っ込め」の怒声を
あの「日本昔ばなし」の声で「何よぉ」と軽くいなす。

映画「八つ墓村」(1977年版)では不気味な双子の老婆役を好演。ちなみに、同作
の東宝版では同じ役どころを、こちらもわたしの大好きな岸田今日子さまが、
濃い茶の尼役の白石加代子さまと共演。だから横溝作品からは目が話せないのだ。

ノラ猫のはるみちゃんを抱いて、都はるみを熱唱するちょっとコミカルな家政婦が
世間の市原悦子像として認知されてはいるものの、彼女の奥深さは本当にはかり
しれない。

これからもいちファンとして気長に次回作を待っています。体を治して一日も
早くもどってきて下さい。お願いします…


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