猫と海辺に暮らす翻訳コーディネーターの阿鼻叫喚な日々を綴る日記。

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ユーミンとみゆき
私はユーミンと中島みゆきさんが好き。もうウン十年来のファンだ。
この二人の歌詞を読んでいると、どうも清少納言と紫式部がちらついて
仕方ない時期があった。それぞれの曲調や歌詞の傾向から、
「ユーミンみゆき=清少納言紫式部」説を考えてみたい。

みゆきさんは、今、かなり神様に近いところにいらっしゃるけれど、その
昔は物凄く叙情的でかつ情念のかたまりのような作風だった。
それはフジテレビが全盛を誇っていたあたり、若者は軽薄短小な世代といわれ、
ただ明るければそれでいいとされていた時代。物静かな人々は隅に
追いやられ、根暗だとかなんとか変ないじられ方をした時期があった。

そんな暗さの頂点にみゆきさんが君臨されていた。

「道に倒れて誰かの名を呼び続けたことがありますか」

大ヒット曲「わかれうた」の冒頭。とても印象的なフレーズで当時「暗さ」
の代表格として槍玉にあげられていた歌詞。でもね、ファンから言わせる
とこんなのはまだまだなまぬるいのよ。

おもいで河→「おもいで河へと身を投げて、もう私はどこへも流れない」
うらみます→「ドアに爪で書いて来たわ、やさしくされてただ嬉しかったと」
エレーン→「生きていてもいいですか、と誰も問いたい」

どや?太宰治の「生まれてすみません」をしのぐ暗さではなくて?
川流れでひっかかったどざえもんだったり、アレンジに尺八の乱れ吹きが
入ったり、行き倒れになった外国人娼婦の歌だったり。徳田秋声の
「黴(かび)」や「爛(ただれ)」、江戸川乱歩の「人間椅子」にも負けな
インパクトでしょ?当時のみゆきさんは歩くお墓とか、本当にひどい
言われ方をしていた。ファンにとっても隠れキリシタンの踏み絵よろしく、
信者であることを告げるには勇気のいる受難の時代。

当時の彼女の歌詞に出てくる女性のモチーフは、源氏物語に出てくる
六条御息所のよう。いささかとうが立った感のある行かず後家風味。
肝心の男には全然相手にされず、源氏の寵愛が若い女に移り行くことに業を
煮やして、とうとうもののけに変身、夕顔や葵を取り殺す生霊としての存在。
当時のみゆきさんは、清少納言の「をかし」ではなく、やはり
式部の「あはれ」に近い。文章もパンパンと固め撃ちのエッセイの切れ味
というよりも、物語を丁寧に説く小説体のイメージ。

一方のユーミンは清少納言の感覚。宮廷内を闊歩しながら、鋭く
威力のある言葉で、並み居る男たちをバッサバッサと切り捨てる。
随所に「私すごいでしょ」的な自慢がうすく入るあたり、たまに話が
シモにおりていく流れや、お笑いのオチ感覚は見事に清少納言だと思う。

DESTINYでは、振られた女がその腹いせから着飾ってきれいになって、
自分をふった男を見返してやろう、といういかにも薄っぺらい女の
衝動を描いている。毎日目いっぱいのおしゃれをして、
憎き男とすれ違うチャンスを虎視眈々と狙う浅はかな女。
そんなある日、たまたま油断をして外出をしたときに男に再会して
しまったのがDESTINY(運命)だという。曲のクライマックスでユーミンが
叫ぶ。

「どうしてなっのぉ、今日に限ってぇ安いサンダルを履いてったぁ」

名曲には違いないのだけど、最後の最後でこのオチ。

ちなみに、これと似た展開として、枕草子に「いみじう暑きころ」という
くだりがある。内容は、とても暑い日の夕暮れ時、牛にひかせた車が
道を行き来し、車のすだれをあげてゆっくりと通り過ぎるのはとても素敵、
さらに、どこかから誰かが吹く笛の音や琵琶の音が、そこはかとなく
聞こえてくるのは、本当におもむきがあっていいわ、などと言っている。
しかし、その舌の根も乾かぬうちに、

「牛のしりがいの香の、怪しうかぎ知らぬさまなれど、うち嗅がれたるが、
 をかしきこそ物ぐるほしけれ」

ロマンチックな描写から一転、「ところでどこかから漂ってくる牛の
しりがいのにおい...あやしい。奇妙でかいだこともないけど、そんな
においさえ素敵に思えてくる私はどうにかしてるわ」みたいな。
このオチの運び、DESTINYだと思うのだけど。

高校生の頃の私は、寝る前にベッドで枕草子を読んでは、大笑いして
逆に目がさえてしまった経験が多々ある。彼女の感性は現代でも十分に
通用する、とても斬新なセンス。

最近の二人はすでにこうした傾向性から離れてしまい、特にユーミン
はなんだか訳のわからないことになっているけど、ここに根強い
ファンがいることを忘れないで欲しい。この二人には今後もできる
限り、素敵な曲を世に送り出してほしいと思う。

スポンサーサイト

コメントの投稿

 管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL

Copyright © 阿鼻叫喚 (あびきょうかん). all rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。