猫と海辺に暮らす翻訳コーディネーターの阿鼻叫喚な日々を綴る日記。

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新宿二丁目探検
会社からの帰り道、駅前で誰かが叫んでいる。泥酔したサラリーマンを取り囲んだ
警察官が、今日も酔っ払いのヨタ話に付き合わされていた。年末恒例の年中行事とはいえ、
警察官の方々にはつくづく頭が下がる。酒にのまれて人に迷惑をかける人間には宴会に出る
資格などないのだ、とブリブリする。そんな警官の横を通り過ぎながら、生涯最初で最後の
職務質問を思い出し、思わず顔が爆発しそうになった。

学生時代、私は大学のすぐ裏手に住んでいた。そんな私は、同じく大学そばに住む
クラスメート3人と夜な夜な集まっては、夜の東京を徘徊するのが楽しくて仕方なかった。
それはイケイケで六本木に繰り出すというハイソなものではなく (そういうこともたまには
あったけど)、もっと泥臭い探検隊。ママチャリ数台で連帯を組んでは、都内の心霊スポットや
未体験ゾーンを走りまくるというわけの分からないチームだった。

その夜も森君から電話が入る。

 「今晩行く?」

行く先は集まってから決める。大学そばの穴八幡神社下に集まるや、高田馬場方面に
向かって坂道をこぎ始める。明治通りにぶつかると、森君が左に曲がった。

 「今日は新宿二丁目に行こうぜ!」

キャーッ、胸がワクワクする!噂に聞くゲイキャピタル、新宿二丁目!日本のゲイのメッカ
としてつとに有名な彼の地に今夜とうとう足を踏み入れるのだ。一体どんなところなのだろうと
思わずペダルを漕ぐ足にも力が入る。

途中ファミレスに入り作戦会議を開く。すると向こうの席にどうやら組合系の二人組が陣取って
おしゃべりをしていた。まだ二丁目は遠いのに、はた目にも明らかにそちらの人と分かる男性
カップル。ガッツリメイクのスーザン・ボイルと芦屋雁之助はんのような二人が、なにやら
ロックの話をしていた。薄く聞き耳を立てる私。

 「そうよね、今度の曲はもの凄い "売り線" の曲だしぃ」
 「それを言うなら "売れ線" でしょ!なによウリセンって」

そういうと周囲をはばかることなく大爆笑。雁之助はんがウリセンっ!と連呼しながら
ゴンゴン床を蹴っている。怪訝な顔をしながら森君に尋ねる私。

 「ねぇ、ウリセンってなあに?」
 「男が男に体を売るところ」

と、そう言うや顔色一つ変えずに他の二人とパフェを食べ続ける。そういえば江戸時代の
陰間茶屋では、歌舞伎役者が男を相手にしていたのだわと考えれば、さして驚くことでも
ないのねと思う。

エネルギー充電が完了した一行は、また自転車に乗って明治通りを進む。花園神社を
越えて靖国通りに差し掛かると森君が叫んだ。

 「そろそろだよ、ここをまっすぐ!」

胸が高鳴った私は先頭に立ってスピードを上げた。ふと気がつくと後ろの3人が見えない。
真夜中のネオン街に取り残された私は不安になり、来た道を引き返す。すると路地裏に
たたずむ3人に向かって、アジア系のおねえさんたちが声をかけていた。

 「シャチョウ、イッパツ、イチマンエン」

ジャパネットたかたの社長っぽい声とアクセントに倒れそうになる私。たった3単語で
商売が成り立つ男女の性に万国共通の普遍性をみた。すると向こうから同じく自転車に
乗ったお巡りさんがやってくる。それに気づいた3人は蜘蛛の子を散らすようにズラかり、
私だけが取り残された。暗闇にたたずむアジアのおねえさんたちと私。一度は通り過ぎた
お巡りさんが引き返して私に声をかけた。

 「あなた、ここで何やってんの?」

確かに怪しい。夜の3時にジーパンにキャップをかぶった学生が、アジアのおねえさん
のそばに自転車を止めている。この状況で、これから新宿二丁目にオカマを見に行くとも
言えず、しかも連れの奴らはどこかに行ってしまった。これまで経験したことのない汗を
かきながらキョドる私に向かって、身分証明書の提示を求めるお巡りさん。その背後、遥か
彼方では、難を逃れた3人組が涙目の私をあざ笑っているのが見えた。お巡りさんは、私より
アジアのおねえさんたちに気をとられているようで、この夜は軽い注意で解放してくれた。

何事もなかったかのように合流する3人に向かい 「あんたたちがアジアの誘惑に負けたこと、
明日クラスの女子全員にぶちまける!」 と復讐を誓い、再び二丁目を目指した。

墓地の角を抜けると小さな公園が見えてきた。

あ や し い

森君が 「ちょっとトイレ行くから待ってて」 と言って、公園の公衆トイレに入って
いった。よく公衆便所などに入るわね、と独り言を言う。きっと個室の中は天井と言わず
壁と言わず、四方八方に吹き散らされた汚物で阿鼻叫喚に違いないのだ。しかも二丁目の
ど真ん中。

森君を待ちながら他の二人と辺りを見回していると、暗闇の中にベンチが点在している。
そのベンチには少しずつ間をあけて男たちが座っていた。自転車に疲れた私は、空いて
いたベンチの端に腰かける。直視しないように気をつけながら、横目でジロリンと
隣の男の子を見た私は、一瞬にして全身から血の気が引いた。

恐らくまだ十代とおぼしき少年の顔は、まるで映画 「呪怨」 の男の子みたいに
白塗りで、目の周りが黒くふちどられていた。一体どういうコンセプトのメークよ。夜中の
3時にこの顔で公園に座って、一体誰が釣れると思っているのかしら。いやもしかしたら
ここに来る人を笑かそうとしているのかも知れない、などと思いをめぐらす。

しかも小さな声で瀬川英子の 「命くれない」 とか唄っている。怖いのよ、あんた。

いたたまれなくなった私がベンチを立つと、足元に雑誌が落ちているのをハケーン。
カピカピにくっついたページをはがしながら、電灯の下で中身を見始めた。タイトル
は 「サムソン」 。何だか韓国の家電メーカーみたいだわ、などと言いながらページを
めくると、そこにはこれまで見たことのない異次元空間が広がっていた。

スケスケのふんどし姿のメタボなおじさんが絡まって口づけを交わしている。その
太った手足はまるで甲羅から生え出したすっぽんのよう。右手にはバイブ、左手には
豊丸のすけべ椅子?をもち、太字タイトルには 「幻惑、デブセンの罠」 と書かれて
いた。みんなに見せようと走りながら、 「見て見てデブセンっ」 と叫ぶ私に、周囲から
もの凄く冷たい視線が注がれる。ここでは自分が招かれざる客であることを忘れていた
私は、我に返って本をもとに戻すと静かに公園を後にした。

そこに森君が興奮気味に戻ってきた。何でも、個室に入るやいなや 「入るわよ」 と
言って、外からカギをガチャガチャされたとか、隣の個室から断末魔の叫び声が聞こ
えたと一挙にしゃべりまくる。かなり怖い目に遭ったらしい。

仲通りと呼ばれるメインストリートでは、浅草サンバカーニバルのようにほとんど裸
のニューハーフが闊歩する。その後ろからは、円盤戦争バンキッドのブキミ星人の
ような脳の形のヅラを搭載した振袖のおじさんが続く。雑誌のファッションモデルや
語学講座の外人インストラクター等、見覚えのある顔もチラホラ見かける。色々な国籍と、
バラエティーに富んだコスプレの男たちが通りに溢れ、みんなとても幸せそうに見える。
彼らにとって、ここは唯一気を許すことのできるパラダイスなのね。そんな人ごみの中
を自転車片手に切り手をしながら進んでいく。

お店の名前も凄まじい。何によらずゲイの人たちは本当に言葉のセンスがいいと思う。
特にネーミングのセンスは、AV業界の映画タイトルに勝るとも劣らない切れ味を
見せる。

最近のドラッグクイーンをざっと見ただけでも、剥栗 (むきぐり) サセコ、肉乃小路
(にくのこうじ)ニクヨ、オナン・スペルマーメイド、バビエノビッチ、ダイアナ・
エクストラバガンザなどなど、いずれも甲乙つけがたい秀作ばかりだわ。

一通り新宿二丁目を堪能した一行は、翌日の授業に間に合うべく新宿の街を後にした。
これ以降、二丁目界隈は私たち探検隊の重要な訪問地になった。その近場で見つけた
ベトナム料理やタイ料理のお店は、人間観察の重要な拠点になっていく。

もう戻ることのできないお祭り騒ぎの時代。忘れられない私の青春時代の思い出は、
時に切ない想いをともなって、今も心の片隅に息づいている。


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おはようございます
ひかりです

とっても楽しい青春をお過ごしになられていたのですね^_^

職務質問も今となっては良い思い出ですね

東京の警察は自転車に乗ってる、パトカー、歩いているとパターンが多んですよね

ひかりも何千年も前にJR大塚駅近くにおりまして、夜中に歯が痛くなり、どうしようもなくなって、チャリで痛いのを紛らわす為に駅前をグルグルしてたら警官3人に囲まれて大変な思いをした事がありましたw

交番に連れて行かれて自転車の名義を聞かれて、高砂熱学と言うと、どうしてお前が高砂熱学のチャリにのってるんだってね!!

先輩が高砂熱学の人で、くれたんです

んで、交番でおまわりさんが、ひかりを可哀想に思ったらしく、私物のバファリンをくれたんです(≧∇≦)


そして交番から部屋に戻る時に、今度はパトカーに職務質問w

長文になってしまってすみません

いつも楽しみにしているブログです

又遊びに来まーす
ひかり | URL | 2013/12/06/Fri 07:04 [編集]
おはようございます。
面白いことをしていたんだなと思いました。
楽しい青春時代が伝わってきました。

男の子怖いですね。幽霊じゃなかと思いました。
ネリム | URL | 2013/12/06/Fri 09:32 [編集]
こんにちは。
わははは!
二丁目探検隊、ラビリンスだったでしょう(^◇^)

私もよく行きましたよ。
ある時、おネエさんたちと閉店まで騒いでいて前後不覚。

気が付いたら見知らぬアパートの布団の中、
隣に喉×ンコを上下させながら眠っているお方。
枕元には日本髪の鬘が鎮座していて、ああこれは店のチ―ママだった。

こっそり布団を抜けだして帰ろうとしたら、
「いま。味噌汁つくるからー」とのチ―ママの声。

仕方ないから暫く待って味噌汁とご飯と沢庵頂き「ありがと」。

外へ出たら大久保だった。
出勤時間らしく、わさわさわささと人が歩いてました。

ナニのほうは大丈夫だった。
みたい・・・

まだいろいろありました。

最近は探検してませんか^^?
NANTEI | URL | 2013/12/06/Fri 10:45 [編集]
今度
写真を撮ってきてください。
どんなんか観たい
でも、勘違いしないでください
私は普通の男ですから。
小判鮫のコバンちゃん | URL | 2013/12/06/Fri 19:40 [編集]
Re: タイトルなし
ひかり様:いつもコメントありがとうございます!

お互いに新宿二丁目や大塚といったちょっとアレな街だったせいもあると
思いたいですねw 皆さんご存じないようですけど、夜中に自転車は楽しいんです。
それにしても夜中の虫歯はきついですね。私だったら出かけずに寝ますw
ところでひかりさんのブログの更新ペースすごいですね!
ウォーリック | URL | 2013/12/07/Sat 04:56 [編集]
Re: タイトルなし
ネリム様:いつもコメントありがとうございます!

友人が活動的な人達だったので、自分ひとりでは絶対に体験できない思い出がたくさん
できたように思います。

> 男の子怖いですね。幽霊じゃなかと思いました。

もの凄いイケメンがいる一方で、何かすごいものを背負っていらっしゃるビジュアルの
人もたくさんいて両極端です。機会があれば一度いらしてみて下さい。
ウォーリック | URL | 2013/12/07/Sat 05:04 [編集]
Re: こんにちは。
NANTEI様:いつもコメントありがとうございます!

>>私もよく行きましたよ。

凄い!いろんなお店を知ってらっしゃるんですね!私はお店の外で出待ちしたりw
周りのエスニック料理のレストランで獲物が来るのを待っていました。
NANTEI様はこういう世界の人達にあまり偏見がないんですね!

最近は、当時の友人が企業戦士になったためなかなか会えず二丁目にも行って
ません。一人では行きづらい場所なので、もう随分行ってないですw
ウォーリック | URL | 2013/12/07/Sat 05:13 [編集]
Re: 今度
コバンちゃん様:いつもコメントありがとうございます!

>>写真を撮ってきてください。

いつも喉から手が出るほど写メの誘惑に駆られるのですが、勝手に撮ったら命が
ないと思いますw 本当はたくさん撮って写真集なんかつくりたい...

>>勘違いしないでください 私は普通の男ですから。

コバンちゃんのように男気や正義感の強い人は彼らの大好物ですよ~
きっとモテると思いますw
ウォーリック | URL | 2013/12/07/Sat 05:19 [編集]
え、やだよ!
>コバンちゃんのように男気や正義感の強い人は彼らの大好物ですよ~
>きっとモテると思いますw
へ~、そうなんですか
でも、私は嫌ですよ!

それと、青春時代に
ピンポンダッシュしませんでした?
小判鮫のコバンちゃん | URL | 2013/12/07/Sat 12:32 [編集]
Re: え、やだよ!
コバンちゃん様:いつもコメントありがとうございます!

> ピンポンダッシュしませんでした?

したことはありませんが、されたことはあります。キレそうになりましたw
ウォーリック | URL | 2013/12/07/Sat 17:42 [編集]
ド迫力ですね
まるで、探検のような夜のお散歩ですね。
う~ん楽しそうです。私もしてみたい(^_^)/

でも流石新宿ですね。きっと迫力とスリルは日本一でしょうね。
白塗りの男の子。。すごいです。
まろんタルト | URL | 2013/12/08/Sun 16:23 [編集]
Re: ド迫力ですね
まろんタルト様:いつもコメントありがとうございます!

> 白塗りの男の子。。すごいです。

ビジュアル的にはもっと怖い人がたくさんいたのですがw 命くれないが凄かった...
ほそ~い声で切々と歌うんですが、何かを背負った感じがいたたまれなくて、
迫力満点でした。探検はとてもスリリングで、今も忘れられませんw
ウォーリック | URL | 2013/12/08/Sun 16:48 [編集]
夜の二丁目
 相も変わらず、切れ味鋭いですね~。
若い頃は、夜の新宿と言えば、よく踊りに行ってました。
大体 歌舞伎町を中心に毎土曜の夜は、フィバーしてましたよ。

 当時二丁目辺りは、そういった人達とその筋の人たちが多かったので、昼間以外は殆んど行ったことは ありません。
そんなに面白そうなところだったら、探索しておけばよかったですね。

 はたまた、ウォーリックさんの記憶の良さにも感心するばかりです。
るどるふくん | URL | 2013/12/10/Tue 14:48 [編集]
Re: 夜の二丁目
るどるふくん様:いつもコメントありがとうございます!

るどるふくん様はもの凄くイケメンなので、二丁目の夜の徘徊はお勧め
できません。貞操の危機ですw

>>ウォーリックさんの記憶の良さにも感心するばかりです。

いえいえ、るどるふくん様には遠く及びません。
ウォーリック | URL | 2013/12/10/Tue 19:37 [編集]
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