猫と海辺に暮らす翻訳コーディネーターの阿鼻叫喚な日々を綴る日記。

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朝の風景
いつもより5分程遅れて家を出た私は、駅に向かって走っていた。
ガラス張りの大きなメルセデスのカーディラー。そのショーウインドーに小走りの私が映る。
気ばかりが焦り体がついてこない私の上半身は下半身と完全に分裂、髪が舞い上って
八つ墓村になっている。

この際そんなことに構ってなどいられないのだ。どうしても56分の電車に乗らなければと
角を曲がった瞬間、子連れのヤンママと出くわした。イヤホンで音楽を聴きながらスマホの
メールをチェックしていた彼女の顔は、朝青竜の内館牧子。出会いがしらに 「チッ」 と
舌打ち、私に暴走族のメンチを切りながら子供を引きずっていく。

とりあえずスルーで駅に到着した私は、転げ落ちるように階段を駆け下りる。でもほんの
僅かの差で間に合わず、無常にもドアは目の前で閉まってしまった。すると、エレベータから
飛び出してきたヤンママが閉まりかけのドアに突進、ベビーカーの先端をグリグリとねじ込んで
いる。ドアはバウンドして一旦開いたもののそのまま閉まり、ヤンママとベビーカーを残して
ホームを離れていった。

泣叫ぶ赤ちゃん。あれほどの衝撃でねじ込まれたら本当に怖かっただろうにと思う。そこへ
遅れて駆けてきた母親とおぼしき中年女性に向かって、ゴージャス松野のようなヤンママが
叫んだ。

 「おい見たかよ!これが子連れ女性への差別だよ。ふざけんな!」

首都圏の通勤ラッシュで1000人からの通勤客が乗車する電車一本止めてでも、
赤子を抱える母親は優遇されるべき。自らの子供を危険に晒してでも主張を通したい
彼女は、ホームの駅員さんを捕まえてJR東日本の心構えを説き始めた。すると、それを
見ていた大学生風のカップルが、怒り狂うゴージャス松野を写メに撮っている。そのまま
ツイッターに 「モンスタークレーマー火病なう」 とでも投稿するのだろうか。

1本遅い電車に乗り込んだ私は、今朝出会った人々の民度に思いを馳せた。
ああいう母親に育てられた子供は、きっと歩きながらケータイを見て舌打ちをしたり、
台風で止まった電車を走らせろと駅員に詰め寄ったり、しまむらで土下座写メを撮ったり
する大人になるのだろうかと暗たんとした気持ちになる。

そんな沈黙を破り、次の駅では4人の幼児が登場。おそらく3才ぐらいの男の子3人に
女の子1人。母親たちはおしゃべりに夢中で子供たちを野放しにしている。男の子3人は、
手に手にプラスチックの剣を持ちズブズブとお互いの体を刺しながら、大人には見えない
敵と戦っている。片や女の子は電車の天井に届く程の高さに揺れ動く風船をもっていた。

この風船が、先日私の身にふりかかった阿鼻叫喚を呼び起こした。



その日、会社帰りに無性にケーキが食べたくなった私は銀座で途中下車、お気に入りの
紅茶の店に足を運んだ。ここは内装が凝っていて、細かに仕切られたヨーロッパの民家風
のコンパートメントになっている。むき出しの原木の柱に、漆喰の白壁。いつもの
「お一人様ご案内です」 の声に導かれ席に通される私。オーダーを待つ私の耳に、
遠くからガヤガヤと子供の声が混じった家族連れの会話が聞こえてきた。ああ、あっち
行け!と思う。

基本私はかなりの子供好きだが、一人になりたい紅茶空間や電車の中では鬼となる。
大人しい子は問題ない。しかししつけのなっていないアーパーな子供や、自分が子供で
あることを自覚して大人を試そうとするダミアンはゲンコツだ。

そして嫌な予感は的中。隣の席に4人の家族連れが座った。お婆ちゃんと母親、そして
5才くらいのお兄ちゃんと3才くらいの弟。さすがに銀座だけあって見た目は小奇麗で
上品に見える。サイゼリアのドリンクバーで立ち飲みのジャージ集団とは違う。

安心したのも束の間、お兄ちゃんがヘリウムの風船を持っているのに気付いた私は
恐怖で体が固まった。それは子供の頃、縁日で買ってもらった大きな風船。私はそれが
嬉しくて、屋台の間をグルグルと持って歩いた。そして軒先の電球に触れた風船が私の
頭の上で爆発し、私は気を失った。

それ以来、風船ゴム関係は恐怖の対象でしかない。心底トラウマである。そんな私の
横に、それはそれは巨大な風船がゆらゆらと揺れている。お兄ちゃんはご丁寧にその
風船を店の原木の柱に押し付けてグリグリと上下させている。正気の沙汰とは思えない。
ブブブブとゴムの擦れる音。いつ爆発するかも知れない恐怖に包まれて私はケーキに
手をつけた。いつも通り、どこからむいていいのやらケーキに張り付いたセロファンの
剥き所にイライラしていると、店内の巡回パトロールから帰還した弟が一言。

 「あ、お兄ちゃん僕にもさせて」

そう言って急に走り出す。そのままテーブルの足につまづくと、私に向かってヘッド
スライディングをかけてきた。テーブルのポールに頭を強打して号泣する弟、こぼれた
ローズヒップティーでテーブルの上が真っ赤に染まる。その熱湯が弟君の頭にかからない様、
とっさに大量の紙ナプキンでおさえる私。その時、私の耳元でお兄ちゃんの巨大風船が
爆発した。



ふと我に帰った私は、今、この電車の中でまたヘリウム風船の恐怖にさらされていた。
大人3人がけの席に4人でミチミチに座った子供たちは 「もうちょっとそっちいってちょうー
だい」 などと貧乏ごっこをしている。とりあえず靴は脱がされているものの、どうやらこれ
からディズニーランドに行くらしくテンションがハンパない。その盛り上がりが
ピークに達した頃、急に車内が静まり返り、みんな口をつぐんでしまった。

そっと目をやると、4人ともスズメのように窓に張り付いて一生懸命に外を見ている。電車は
舞浜に近づき、遠くにディズニーシーのプロメテウス火山が見えてきた。どんどんと近づいて
くるディズニーランドを見ていた子供たちが目を輝かせ、小さな声で 「ミッキー、ミッキー」
と呼んでいた。

ああ、ミッキーに会えるのが嬉しかったのね....

ようし、うるさかったのは全部許す!今日一日お母さんとお友達と一緒に
思う存分楽しんでいらっしゃい!

ドタバタの朝の一コマ、結局最後は子供に救われて電車を降りた。


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はじめまして。
朝の通勤電車、たまに居ますね、こういう人(女)。。
働いた事ないのかな〜〜と思っちゃったりします。
とらとら | URL | 2013/10/12/Sat 17:12 [編集]
Re: タイトルなし
とらとら様:コメントありがとうございます!

きっと育児で猛烈に疲れているんだろうなとは思うのですが、赤ちゃんと
駅員さんが可愛そうになってしまいました。イライラって伝染するん
ですね。
ウォーリック | URL | 2013/10/12/Sat 18:53 [編集]
こんばんわネリムです。
育児している人って余裕が無いんだなと思いました。
ネリム | URL | 2013/10/12/Sat 21:39 [編集]
Re: タイトルなし
ネリム様:いつもコメントありがとうございます!

4時間に1度ミルクあげたり、急に熱を出したり。赤ちゃんは大変なのは
分かりますが、ちょっと怖かったです。
ウォーリック | URL | 2013/10/12/Sat 21:55 [編集]
母親
子供をしっかり見なさい!
親は子供の鏡。でしたよね?
靴を脱いでいるなら
よろしい!
小判鮫のコバンちゃん | URL | 2013/10/13/Sun 00:48 [編集]
Re: 母親
コバンちゃん様:いつもコメントありがとうございます!

子供って本当に可愛いですね。だからきちんと教えてあげたいとつい
お節介でヤキモキします。実際の子育ては本当に大変だと思うので
お母さんたちにも頑張って欲しいと思います。
ウォーリック | URL | 2013/10/13/Sun 10:47 [編集]
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