猫と海辺に暮らす翻訳コーディネーターの阿鼻叫喚な日々を綴る日記。

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

始発電車の住人
私は毎朝、最寄り駅から始発電車に乗って通勤している。
当駅始発に乗るために、行儀よく2列に並んで電車が来るのを待つ。

その列の先頭に、毎朝必ず並んでいる女性がいる。
身長は174cm程、いつも上下のウィンドブレーカーを着用、大きな
ディバッグを持ち、27cm程のスニーカーをはいている。
顔はキムヨナを太らせた感じ。髪は短い癖毛をひっつめてトップで小さな
お団子を作っている。少し猫背で電車待ちの列に並ぶ姿は、幕内の力士
さながらの風格。

いつもはそんな素振りもみせない彼女が、その日は空腹に耐えかねて
いたのだと思う。おもむろにディバッグから取り出した1本のスイスロール。
手元もおぼつかないほどに慌ててプラスチックの包装を解くと、
あろうことか天を仰ぎながら、ガブリとかぶりついた。

関西で節分に行う「恵方巻き」のように、両手で水平に持った
スイスロールを一口食べては、ミルクたっぷりのペットボトル入り
カフェオレで流し込む。そのステップを3回ほど繰り返すと、もののみごとに
スイスロールが消えてしまった。口の周りを右手の袖でワイルドにぬぐうと、
残りのカフェオレを一気飲みして朝食が終了した。この日を境に彼女の
立ち食い朝飯が始まり、先日は20~30cmはありそうな羊羹をむくと、チョコ
バーのように片手でしゃきーんとかじる。じゃがりこを数本まとめて口に
入れたり、カフェオレ片手にからあげくんやきのこの山を口に流し込む勇姿が
木の実ななさんみたいでカッコイイ。

この食事風景は彼女の身長とディバックでカバーされ、列の後ろにいる人
には見えない。隣に立つ私と、向かい側のホームにならぶ人たちだけが朝の
儀式を目の当たりにする。

ゆっくりとホームに流れ込む電車。吐き出される乗客を待ち、彼女は
3人がけの壁際末席に座り、ディバッグからなにやら取り出す。どうやら
嵐の追っかけをしているようで、コンサートか何かの資料のスケジュールを
綿密に確認している様子。

立ち食いはいただけないけど、食べ物を電車に持ち込まれるよりは
100倍マシ。最近は、車内で化粧をしたり携帯見ながらランチパック食べたり、
一体この国の女はどうなっているのだろう。以前、ランチパックのCMで「席朝」
などという言葉をはやらせようとしていたけど、会社の自席で朝食などという
はしたない真似を許すほど、まだ日本人は落ちぶれていないのだ。

申し訳なさそうに大きな体を壁によせて嵐の下敷きを見つめる彼女に
しおらしささえ感じてしまう。

彼女の朝食に目がいくようになってから、ある事実に気がついた。
朝の始発電車を待つ列の先頭には必ずデブが並んでいるということ。
彼らは決まって一番端の座席に座り、そのまま眠りに落ちるのだが、
その後ほかの乗客が入ってきても目を覚ますことはない。この座席の取得
理由は明白で、もし自分があとから乗り込み、左右に人が座っていた
場合、物凄い目で見られることを彼らは知っている。人によっては、舌打ち
をしたりするもの。そんなリスクを避けるために朝5分早起きする世の
デブたちの努力にエールを送りたい。努力といえば同僚のデブ子が昼食の
レタスサラダにノンオイルドレッシングをかけて3枚ほど口にした後、
「もうお腹いっぱいで無理ぃ」「あたしって水を飲んでも太る人なの」という。
日々繰り返されるお昼時の小芝居を見るにつけ、内心、その食事でその体は
ないでしょう、と思いつつ、人前では決して食欲をあらわにすることのない
「デブの少食アピール」を生ぬるい目で見ていた。これは立派なデブの
たしなみである。

それはマンバが流行ったころ。キャミワンピをまとった100kg超級の
ヤマンバが一人で乗り込んできた。キャミの肩紐が肉にめり込んで、
胸に大きな腹巻をまきつけただけように見える。デブなのになぜか貧乳。
ヒップにいたるまで数箇所の締め付けは、おそらくインナーの線だと思い
ながら、靴に目をやる。かつてはピンヒールだったと思われるヒール部分は、
支えきれない体重でさかさまにしたエリンギのように。グレーに染め
られた髪に艶はなく、バッグのビーズが剥げ落ちていぼいぼになっていた。
爪は真っ黒によごれ、おそらくプチ家出を繰り返す汚ギャル系の
種族かと思われた。

顔は明らかに化粧品を消耗する面積だ。
きゃりーぱみゅぱみゅの親友の「げーはーこさん」みたいな感じ。
とても勝てる気がしない。

その彼女は電車に駆け込むや、一つだけあいていた席に無理やり体を押し込む
と、バッグからウェットティッシュを取り出して体を拭きだした。隣の
サラリーマンは、汗ににじんだ彼女の二の腕がスーツに触れるのをしきりに
気にしている。脇をかためたまま、ウェットティッシュをわきの下に押し込
みゴッシゴッシと汗を拭く。短い足がピンヒールで持ち上げられて、スカートの
中身がもはや全開。向かい側に座る高校生が怖いもの見たさで注視して
いるのを目ざとく見つけた彼女は、ありえない大声でガンを飛ばす。

「見てんじゃねーよっ、んバーカ」

車内の空気は100%、耳まで赤くなった高校生の見方。
こういう分をわきまえないデブは前足に重石くくりつけて、印旛沼
あたりに沈めたい衝動に駆られる。どう都合よく考えれば自分が異性の注目を
集めているなどと誤解できるのかしら。座席を陣取って5分以上経っても呼吸が
荒いのはなぜだ?牛乳を拭いた雑巾の臭いを体から放ちながら、ヒューヒュー
と体を拭き続ける女にいたたまれなくなり、私は車両を替えた。

人間には慎ましやかな態度が必要なのだと、心から思う。


スポンサーサイト

コメントの投稿

 管理者にだけ表示を許可する

管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
| | 2013/09/29/Sun 15:44 [編集]
観察しているっすね。
ウォーリックさん、色々、身の回り全般、鋭く観察しているっすね。
洞察力が本当に研ぎ澄まされていますね。
表現も
「ヒール部分は、支えきれない体重でさかさまにしたエリンギのように」
と面白いですね。

今後も勉強させていただきます。
kungfu0807 | URL | 2013/09/29/Sun 21:23 [編集]
Re: 観察しているっすね。
kungfu0807様:いつもコメントありがとうございます!

勉強だなんてとんでもないw 私のブログにお付き合いいただいて
すみません。以前書いた通り、過去記事は手を加えてリサイクルをしたりし
ますので「アレ、前に見た!」と思ったら、2人の秘密にしておいて
くださいね!
ウォーリック | URL | 2013/09/29/Sun 21:43 [編集]
トラックバック
トラックバック URL

Copyright © 阿鼻叫喚 (あびきょうかん). all rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。