猫と海辺に暮らす翻訳コーディネーターの阿鼻叫喚な日々を綴る日記。

スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

しょんべん芸者
何やら穏やかならぬタイトル。

事の発端は、先日テレビで見た京都舞妓(まいこ)の特集である。

自毛を結い上げた舞妓さんは、芸の修行をしてやがて芸妓になるという。
舞妓さんは関東でいう半玉、芸妓さんは芸者。先日の腐女子が汚超腐人へと
羽化するように、半玉も芸者さんへと成長していく。

以前、ドイツ人の友人に「フジヤマ、ゲイシャのゲイシャはジャパニーズ
ギターを弾く着物ダンサーでしょ?」と質問された。ジャパニーズギターは
たぶん三味線のことだと思うのだけど、果たして芸者ってダンサーなの?

この「芸者さんの正体」が、長らく心に突き刺さっていた。

今となっては手の届く範囲に芸者さんがいないものだから、ふと文芸作品に
思いを馳せる。「雪国」の駒子は芸者だったけど、清純派。「金色夜叉」の
中では、「別れろ切れろ」の恋愛対象、「死んだはず」のお富さんは、
たしか木更津の芸者。そして、永井荷風の「墨東綺譚」では、置屋にいて
出番を待つ慎ましい芸者さんの姿があった。漠然としたイメージの中、私は
芸者が何たるかを知らない。

そんな折も折、深夜のテレビで温泉芸者特集なるものを見る。そこで画面に
映し出された温泉芸者たちは、奥ゆかしい駒子でも、はかなげなお宮でも
なかった。

依頼を受けた温泉芸者たちは、高ぼっくりなど履いていない。派遣先の旅館
まで無理矢理チャーターバスで乗り付けるや、どやどやと大股で館内を
練り歩く。その後、宴会場でくり広げられた彼女たちの芸が阿鼻叫喚。粋な
三味線も小唄もない、すべてがハイパーの一言だった。

宴会場の真ん中に一列に並べられたビール瓶は10本。そのビール瓶の上には、
それぞれ100円玉が乗せられていた。すると、瓶の列を目の前に、一人の温泉
芸者が立ちはだかる。この上沼恵美子風熟女が、おもむろに着物の裾を
たくし上げた。

「ハイッ」

微笑む彼女が、なんと1本目の瓶上で思いっきりのスクワット。するとあら
不思議、先ほどまで瓶の上にあった100円玉が跡形もなく消えてしまった。

「一体、どこにいってしまったんでしょうねぇ」

と、いぶかしがるレポーターのコメントに、テレビの前で倒れる私。

その後、列の最後まで見事すべての100円玉を消し去った彼女は、ゴール
で熟女を待ち構えるエロ親父客の持つザルの上にまたがり、

「ハイヤーッ」

テンションが...
奇声とともに、ザラザラと音をたててぶちまけられた100円玉は、すべて彼女の
チップになるという。

次は寝技。不自然に宴会場に敷かれた布団の上に転がる中年の温泉芸者。
その大王イカのような体を横たえ、おもむろに真っ赤な布団に寝転がるや、
ゆっくりと着物の前を開いた。そこに取り出した一本の吹き矢。これを使って
壁にとりつけられた風船を割るという。

(仕事人みたいだ)

問題は吹き矢を吹く場所である。なめるように大王イカをパンしたカメラが、
突然横からのアングルに切り替えられる。使用部位は、先ほど上沼恵美子が
100円玉を吸い込んだ場所と同じ。

いくらなんでも、と半信半疑の私の目の前で、「エイッ!」という掛け声と共に、
空を切って吹き矢が放たれ、見事標的の風船を割ってしまった。

最近あちこちで地場産業を荒らす温泉コンパニオン。この新興勢力に対抗する
ため、腹筋トレーニングのような日々の芸の研鑽が欠かせないのだそう。
ちなみにこの風船割りシーンは、しつこいほどにスロー再生されていた。

これが芸者芸の真髄なのかはなはだ疑問に思った私は、古典芸能に詳しい叔母に
電話をかけて温泉芸者について聞いてみた。すると開口一番叔母が一言、

「そんなのはしょんべん芸者でしょう?」

また新たなカテゴリーの芸者だ。

叔母の口から飛び出したこの単語に、頭の中をあらぬ妄想が駆け巡る。
先鋭化した顧客ニーズに応えるため、とうとう究極のスカトロ芸に到達して
しまったしょんべん芸者たち...

あの温泉芸者の芸を見れば、さもありなん、と思う。

すると叔母は、

「ばかねぇ、小唄や踊りが満足にできない芸者さんのことよ。“ちょっと一節
やってくれない?”とお客さんに言われると、下手なものだから“お手洗
行きますっ”、て席をはずしてそのまま戻ってこない芸者をこう呼ぶの」

よかった。さすがにいくらなんでも宴会場ではと思っていたの。
叔母が思った以上に芸者に詳しそうなので、さらにその実態を聞いてみる。

「普通の芸者さんの陸揚げにはどれぐらいのお金が必要なの?」
「……」「もしかして、水揚げのこと?」

日本語は難しい。水と陸を間違えただけでこんなにも意味が違うなんて。
正解は「水揚げ」。めでたく身元引き受けをしてくれるパートナーをみつけ、
芸者の世界から足を洗うこと。

私が言い放った「陸揚げ」は、トドとかよね。

その後、興味をもって調べてみると、やはり一流の芸者さんは「芸は売っても
体は売らぬ」と生涯を独身で貫き、芸の精進を怠らないとのこと。

昔ながらの芸妓さんは同性からも尊敬の念があつく、昔は絵葉書や人気投票
まであったとのこと。男の勝手にはならないとは粋な心意気だねぇ、本当に
カッコイイ。

結局、芸者さんは奥が深くて、十把一絡げとはいかない。

それにしても温泉芸者さんの妙技は特筆。新たなエンターテイメント産業と
してエイベックスとかが参入すれば、きっと一大ビジネスになりそうな
予感。


スポンサーサイト

コメントの投稿

 管理者にだけ表示を許可する

ウムム・・・
こんばんは、

今日もまた言葉にできないほどの驚きにまみれている私でございます(笑)
くだんの温泉芸者さんの秘技も、とても1日、2日で習得できるとは思えませんから、
それなりに彼女たちの血のにじむような?修練の賜物なのでしょう。
人体の不思議に触れた心地がします(笑)

それにしてもちょっと際どいこのような話題を
軽やかにまた面白く書き連ね、しかも最後には女の粋に言及し、
さらに日本の新しい成長産業の可能性にも触れる視野の広さ!
ただもう、ウォーリックさんの表現力に脱帽!です。
ありがとうございました。
一本の葦 | URL | 2013/07/18/Thu 23:05 [編集]
Re: ウムム・・・
一本の葦様:コメントありがとうございます!

すみません、今回は特に下品になってしまって。
でも吹き矢があまりにすごかったもので、誰かにお知らせしたいな
と思って書きましたw

前回、自分なりに封印している政治ネタに触れてしまったので、
バランスを取ろうと思った結果、ものすごい下ネタに。でも、
ライバルの温泉イベントコンパニオンはもっとえげつなかったんですw
ウォーリック | URL | 2013/07/18/Thu 23:49 [編集]
会社の人から
100円玉の話し聞いた事があります。
新人の芸者が
練習中に取れなくなり
病院へ行ったそうです。
努力しているんですよ
彼女たちも。
小判鮫のコバンちゃん | URL | 2013/07/19/Fri 18:35 [編集]
Re: タイトルなし
コバンちゃん様:コメントありがとうございます!

そうなんですね、何かつらいです。
男性芸者が中年女性客の前で同じ芸をしていたら、と想像して
みてください。
ウォーリック | URL | 2013/07/19/Fri 19:33 [編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
| | 2013/07/20/Sat 01:08 [編集]
こんばんわネリムです
先日をお越しいただき有難うございます。
一つのことをやり抜くのは、相当な努力をしているのだなと思いました。
ネリム | URL | 2013/07/20/Sat 23:22 [編集]
Re: Re:Re:ウムム・・・
一本の葦様:もったいないお言葉の数々痛み入ります。

私のブログの内容でこんなにも持ち上げていただいて、本当に
恐縮しております。一本の葦様は言葉の錬金術師の様です。
色々な引き出しから、多くの語彙を引き出されて別なものへと
昇華させていく人生経験の年輪と人間性の深みが感じられます。
私もいつかそうなれればと思うのですが。
これに懲りずに遊びにいらして下さい。
ウォーリック | URL | 2013/07/21/Sun 00:39 [編集]
Re: タイトルなし
ネリム様:コメントありがとうございます!

そんなそんな....ネリム様のブログ全体から伝わるイメージがもの凄く繊細な
ので(私とはまるで逆ですw)、実生活では色々ご苦労があるのではないかと思って
しまいます。でも、だから感性の高いものを生み出すことができるのですね。

何か最近どんどん変な方向に行ってますが、また遊びにいらして下さい!
ウォーリック | URL | 2013/07/21/Sun 00:45 [編集]
2014,4,18の記事「ミミズ天国」から、こちらの「しょんべん芸者」に一足飛びに参りました。一般に、芸者は芸は売っても身体は売らないが身上で、それで、昔は、花魁のほうが、格上なのだそうです。現在の感覚では、今の芸者は、両方兼ねてるように認識してしまいますが。にしても、面白い・・読ませますねえ。(^^♪
imagica | URL | 2014/04/22/Tue 21:22 [編集]
Re: タイトルなし
imagica様:いつもコメントありがとうございます!

さすがにお詳しい!しかもわざわざ古い記事まで読んでいただいて
ありがとうございました!今は正当な芸を踏襲する芸妓さんがどんどん
少なくなっているらしく、日本の伝統芸能が廃れていくのは悲しい
ですね...

それはそうと昨夜偶然にも深夜番組でまた吹き矢を見ましたw

今回は年季の入ったストリッパーさんなのですが、この記事でご紹介した
吹き矢芸 + ファイヤーが凄かったです。何か発火性のお粉のようなものを詰めて、
出口にかざした炎に吹きかけると火焔渦巻く炎の世界に。今は出産後の女性たちの
悩み相談を兼ねた講演活動もされているとか。

見ようと思って狙った番組ではないのですが、油断をしているとそのワンコーナー
で火を噴いていたりして...つくづく呼ばれているのかと思います。
ウォーリック | URL | 2014/04/22/Tue 21:57 [編集]
引き寄せの法則ともいいます
呼ばれて引き寄せられて・・むむ(/・ω・)/
imagica | URL | 2014/04/23/Wed 23:22 [編集]
Re: 引き寄せの法則ともいいます
imagica様:いつもコメントありがとうございます!

高確率で引き寄せられるのがオマタで吹き矢とか。
良縁やお金にはおおよそ縁のない私の人生w
ウォーリック | URL | 2014/04/24/Thu 03:21 [編集]
トラックバック
トラックバック URL

Copyright © 阿鼻叫喚 (あびきょうかん). all rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。