猫と海辺に暮らす翻訳コーディネーターの阿鼻叫喚な日々を綴る日記。

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ラピュタにのって
私の家は千葉市内のとある丘の上にある。

海のそばに住みたいと思って、都内から引っ越して早十数年。そんな家の2階からは
遠く千葉ポートタワーを眺めることができる。このポートタワーはクリスマスになると、
タワー全体にクリスマスツリーが灯って、ちょっとメルヘンな感じ。
                             tower2.jpg


タワーの目の前には小さなビーチとそれを取り巻くように松林が広がり、ちょっとした
公園になっている。その公園の中心には牧草の生えた小高い丘があり、頂上には数本の
木とともにベンチがすえつけられている。その丘からタワーの反対側に振り返れば、
宇宙船のように大きな某製鉄所の溶鉱炉が天空の城ラピュタのごとく横たわり、
夜にはライトで照らされる。

この界隈には美術館や小さな野外コンサート会場もしつらえられていて、
休日にはご近所の方が犬の散歩に訪れる癒しのスポットだ。

私は仕事が忙しくなったり気持ちがガサガサすると、軌道修正のため
海に行く。それも大海原の大海というよりは、どちらかというと人の手が入った
港の方が好きだ。このタワー周辺のようにレストラン、カフェやトイレが
整備されている場所は本当にありがたい。

大海原が嫌いというより、海の家のトイレが阿鼻叫喚だから嫌なのよ。

先日もあまりに仕事が忙しくて、ちょっと頭と心のバランスが怪しくなったので、
読みかけの本をバッグに入れて海をめざした。家から最寄りの海へは坂を下って徒歩圏内
なのだけど、このタワーまでは一駅分。それでもタリーズやスタバでコーヒーを
買って海を見に行く。

JRの駅を抜けると、洋館仕立ての白亜の建物。これはラブホではなく、結婚式場。
そのまま角を曲がれば、モノレールを背にしてタワーまで一直線の道。
あまりに人工的な直線の視線の先に、メタリックに屹立するタワーの人為性に
心奪われる。私は健康的なロッキーマウンテン!とか大自然ゴールドコースト!
というよりも、人類の歴史と手垢にまみれたかび臭いヨーロッパが好き。

だから大好きな海のそばに、こんな人工的な建造物があるとゾクゾクする。

埠頭の先に佇んで、クラゲを見ていると癒される。半透明で美しいフォルムは
一瞬たりとて同じ形でいることはない。波に揺られて自分の意志もなく、
ただただ波間にたゆたう姿が、自分に重なったり羨ましくもあったり。

勝手に靴を脱いで海に突進していく三歳児と、それを全力で止める母。
なんで子供は水を見るとひたるのだ?

ぼんやりと海を見ている間にも、冬の太陽はすぐに傾く。少し体が冷えてきたので、
静々と逢魔が時を迎える前に、丘に登ってコーヒーを飲もうと思う。ウォータープラザ
(水上公園風味) を横切って、私のアンソニーの丘に向った。

私はあの小高い丘をアンソニーの丘と呼んでいる。もちろん私が勝手につけただけ。
ある一定の年齢以上の方はご存じのアニメ、キャンディキャンディで、超絶美少年が
なぜかバグパイプを吹いている丘がある。

なんのことはないただの丘なのだけど、それじゃあつまらないじゃない。
最近、どこかのスーパーかなんかが、「日常を特別な日に」 的なキャンペーンはって、
無理矢理にダサいアクセつくったり、いらないインテリアの置物作る 「提案」 をしてる。
でもね、何も物欲を煽らなくたって、いくらでも日常を非日常に変えることなんてできるのよ。

一度この丘にアンソニーが佇んで私を待っていると思うと、赤さびにまみれた製鉄所が
モンサンミッシェルに変わる。それはやがて、夕陽に照らされて陽が落ちるにしたがい、
衣を脱いで天空の城ラピュタに変貌していく。

尽きることのない年増女の妄想が炸裂。

でもこの妄想癖のおかげで、私の日常はいつも非日常。サリーちゃんの家が木の
切り株からカワイイお家に変わるように、サビサビの製鉄所が魔法でみるみる
モンサンミッシェルやラピュタに変わるのよ。

「休日はアンソニーに会いに丘をのぼって、天空の城ラピュタに乗るの、ウフッ ♡」

なんて真顔で言ったら、マジモンで病院送り ʅ( ՞ਊ՞)ʃ≡≡ʅ( ՞ਊ՞)ʃ きえええええぃ

「なんでもない日常を楽しむ」 「日々を丁寧に生きる」

なんて身構えなくても、こうして毎日十分に楽しい。

お腹すいた、とおもむろにバッグからフーガスオリーブを取り出す。
これはお気に入りのパン屋さん Viron で買ったとっておきのパン。
葉っぱ型のパンに切れ込みを入れて、そこに刻んだオリーブやアンチョビを
入れて焼くのだけど、これがなんともおいしい。特に Viron のパンは、フランス人
お墨付きの小麦だから、是非一度試していただきたい。

ベンチに腰掛け、フーガスを横に置いた私は、コーヒーを飲んでほっと
一息。するとガサッと音がして、何かが走り去った。

見れば私のフーガスを袋ごとガッツリくわえたジャックラッセルテリアが、
イノシシのように猛スピードで坂を下り、その後をピンクの服を来たフレンチブルと
デブなコーギー、同じ顔のトイプが二頭追いかけていく。

「すみません」

女性の方が私に声をかける。一体、どの子のお母さんか知らないけど、このママさんに
よると、私が丘をのぼる間、複数の犬がずっと私をストーカーしていた模様。 Viron の
フーガスのにおいにつられてワンコが行列を成していたそうだ。

呼んでも戻らない犬の様子を見にきたところ、パンの強奪現場に出くわしたらしい。
ピンクのフレンチブルのママらしいが、とったのはラッセルテリアだ。

見れば丘の下で追いつめられたテリアの袋にトイプ兄弟が食らいつき、頭を
振り回して袋を破く。そこから飛び出たフーガスをゲットしたのは、なんと
フレンチブルちゃんだった。

「あーもーいやーだぁ」

ママの絶叫。結局主犯になったブルちゃんが仕留めた獲物をくわえ、丘の上のママめがけて
戻ってきた。デブなコーギーはみずからの肉で脱落、テリアは飼い主がしれっと連れ去り、
トイプも撤去されてしまった。

ブルちゃんのよだれでブカブカになった私のフーガス...ママさんは弁償しますと
いうけど、犬のしたことですからね。ブルちゃんの大きな口から間断なく流れ続けるよだれの滝。
本当に食べたかったのねw 飼い主によっては食べ物制限してるので、「もしよろしければ」
ということで、そのままブルちゃんにあげた。ブルはあのでっかい口で、たったふた口で
食べたわよ。ワンコって噛まないの?

ママさんだけが恥ずかしい、でも楽しい思い出。

ふと気づけば、周囲にはもう夕闇が降りてきて、風の流れが変わっている。
私のモンサンミッシェルはライトアップされたラピュタになった。

この海と空は世界に続いてる。

さあ、このままシリアに飛んで、イラクに流れて、子供たちを
乗せてちょうだい。

つらい人たちを助けてちょうだい.......


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