猫と海辺に暮らす翻訳コーディネーターの阿鼻叫喚な日々を綴る日記。

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宜保愛子
上野でウィリアム・ターナー展をみた帰り道、久しぶりにお茶の水の街を歩いた。

画材を買って神田明神を通り過ぎる。そういえば昔ここで桜田淳子が壺を売って
いたという都市伝説が頭を過った。路上に潰れたぎんなんの汚物臭にまみれながら、
なぜだか桜田淳子がツボにはまって笑いが止まらない。

そうそう、「壺」 と言えば宜保愛子 (ぎぼ あいこ) 。ニコライ堂を通り過ぎながら
「韓国の壺は危ないわよ」 と言ってメディアを追放された霊能者を思い出した。

私は、どこか憎めない彼女が大好き。ボヘミアンの葛城ユキとライス国務長官を足して
二で割ったようなゴーゴン顔。流暢な英語を話す長身でスタイリッシュな彼女は、霊界を
感じさせるおどろおどろしさがない。顔だけがひたすらに怖いのだ。そんな彼女は当時、
とんねるずの石橋演じる 「いぼタカこ」 としても名を馳せていた。

そもそも一介の主婦だった彼女は、心霊研究家の新倉イワオ氏に見いだされ一躍
メディアの寵児となる。子供の頃、夏休みになると決まって組まれた心霊特集。特に
「お昼のワイドショー」 の再現フィルムは、日本中の子供達をビビらせていた。新倉
イワオはこの番組の放送作家。残念ながら自分では霊が見えない彼は、宜保愛子を
伴ってお化け屋敷を探訪していた。

二人が行く海外の心霊スポット特集は絶対に見逃さなかった私。いつも番組前に
トイレを済ませると、後々困らないように廊下の電気をすべてつけっ放しにしてテレビ
の前に陣取った。そんな中、今も忘れられない海外の廃墟特集がある。

鬱蒼と生い茂る木立の中にたたずむ木造の家。大きな屋敷はボロボロに朽ち果て、
昼間にもかかわらず、ドヨヨンとこの世のものではないたたずまいを見せている。
この回はいつになく宜保さんが怯えていた。かなり強烈な霊団らしく、屋敷への道々
お清めの塩をまき散らしては、ああ恐ろしいなどと言っている。すると新倉イワオが
宜保さんに向かって一言、

 「それじゃあ、夜に出直して来ましょう」
 
 「・・・・」

セッティングは十分怪奇なのに、私はその日の宜保さんのファッションが気になって
集中できない。ブランドのTシャツにパンツ姿の宜保さんは、なぜだかそのTシャツの
上からベルトを締めている。ガッツリ締め付けられたお腹は、横から見ると真っ二つに
割れてすごいことになっていた。恐怖特集にもかかわらず、どうにもベルト位置が気に
なって恐怖に浸りきれないのよ。

そしていよいよ夜。照明さん、カメラさんの前をあるく宜保さんと新倉イワオ。怯える
宜保さんが 「二階の窓から大きな顔がこちらを見ていますよ!」 と訴えている。新倉
イワオは霊が見えないので一人でグイグイ行ってしまった。そこでドブ板を踏み外すや、
その音に驚いた宜保さんやカメラクルーが絶叫しながら逃げて来る。漆黒の闇に一人
取り残された新倉イワオの悲しい叫びがこだましていた。

仕切り直しとばかりに屋敷に戻る一行。するとドブ板の恐怖からか、いつの間にか宜保
さんのベルトがズレていた。膨らんだお腹の上にずり上がったベルトは、後ろからみると
ウエスト定位置にあるものの、前から見るとバストの下に挟まってひどくこっけいな
状態に。

怯える宜保さんを無理矢理先頭に立たせて、一行は二階への階段を上がっていく。
おもむろに階段の角を曲がるやいなや、宜保さんが悲鳴をあげた。

 「あそこに寝てますよっ!」

見れば、朽ち果てたベッドの掛布団がめくれ、そこに半身を起こし顔が半分腐り落ちた
老女が、目を真っ赤に充血させてこちらをにらんでいるという。それでも霊が見えない
新倉イワオはお構いなし。どこですか?と平然とした声で怒りに震える霊に向かって
グリグリと懐中電灯を向ける。恐れおののく宜保さんに、

 「じゃ、その布団をめくって下さい」

今、霊がかけて寝ている掛布団をめくり倒してくださいと言う。霊が見えないもの
だから言いたい放題。えっ、信じられないという顔で新倉イワオを睨み返す宜保さん。

 「こ、これをですか?歯をむき出して威嚇してますよ」

という宜保さんに向かって、新倉イワオがあっさり、

 「めくって下さい」

腰が引けてへっぴり腰になった宜保さんのベルトは、すでにバストのあたりまでずり
上がっていた。彼女がめくる掛布団の下に何があるのか、一同がかたずを呑んで
見守る中、一気にめくられた布団の裏には、どす黒く変色した血痕が一面に染み
付いていた。

あ゛~と悲鳴を上げながら、デデデデと走り去る宜保愛子と新倉イワオ。そして
それに続く照明さんとカメラマンたち。何が何だか分からないうちに今回の怪奇特集
が終わってしまった。

その後の彼女はピラミッドの謎を解明したり、マリーアントワネットとお話ししたり、
ダヴィンチとノストラダムスの遭遇を霊視したりして八面六臂の活躍を見せていく。

しかし、オウム真理教その他のカルト宗教が社会問題化するにつれて、うさん臭い
ものとして葬り去られてしまった。

当時、宜保さんを叩いていた某大学教授は 「科学で証明できないものはない」 と
言う。科学者としていかに僭越でおこがましい態度かと思う。世の中は分からない
ことだらけ。そんな事象を仮説に基づいて実験し少しずつ理論化したものを、人間が
勝手に 「科学」 と呼んできたに過ぎない。有史以来、最近になってやっと学問と
しての入り口に立ったばかりの科学。まだまだこの宇宙には人間の計り知れない
ことがたくさんあるのだ。

優れた科学者は、こうした目に見えない自然の摂理に謙虚だ。それは、人智を
超えた英知に畏敬の念をもってこそ、これから解明されていくであろう未知の事象
からインスピレーションを受け取ることができると知っているから。

もし科学が万能であるというならば、すぐにでも 「なぜ人間は生まれてくるのか」
という人類の永遠のテーマに答えてもらいたい。それができないのであれば、逆に
科学で証明できないものの方が遥かに多いと知るまで、自らの浅薄な知識で未知の
事象を否定するのは止めた方がいい。不遜な態度は、それが科学者としての限界で
あると知るべきだ。

本物の霊能者か、はたまた詐欺師か。

数々のバッシングの末、2003年に宜保さん、そして昨年には新倉イワオ氏も
亡くなってしまった。今頃二人は霊界で何をしているのだろう。


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デブなニュース
テレビでフィギュアスケートのグランプリ (GP) シリーズ初戦、スケートアメリカ最終日を
見る。町田君、そして真央ちゃん、ダブル優勝おめでとう!

こうして日本人が白人と同じステージに立つと歴然とする体格差。Kiss & Cry で男性
コーチに抱かれ、うっとりと恍惚の表情を浮かべる小柄な町田君は、どこからみても
立派なお稚児さんだった。きっと今宵は腐女子のおかずになる。

そして同じくスレンダーな真央ちゃん。銀盤を舞うその姿は妖精のように軽やか。フリー
のトリプルアクセルは失敗したけど、苦手のSPの貯金で見事優勝。この調子で次のオリン
ピックでは、ライバルの整形慰安婦をこっぱみじんに打ち負かしてちょーだい。
ソチでは、かの国のジャッジ買収やロビー活動がないことを心から祈るばかりだ。

そんな真央ちゃんのスケートを見ていると、背景の観客席にポツリポツリと座るジャバ・
ザ・ハットを発見。あの寒い会場で半袖Tシャツのまま、三段腹の上に手をのせた
マツコ級のデブがそこかしこに座っている。ああ、ここはアメリカなのだと改めて会場を
確認する一瞬。

一度気になるともはや修正は不可能。私の視線は、真央ちゃんのトリプルルッツよりも、
ふてぶてしく一人で三人分の席を陣取る客席のアメリカンデブに向けられる。
その姿は久しぶりにテレビで見かけた美食レポーターの彦麻呂。かつてアイドルだった
その顔は、深い森の奥に住む悪い魔女に魔法をかけられてガマガエルにされた
王子様のように腫れ上がり、やはりTシャツを着ていた....

どうしてデブは半袖にサスペンダーなんだろう。

そういえば今日のニュースで見たAV制作会社の社員も半袖だった。売春クラブに
デブ女を紹介したとして逮捕されたこの女もやはりデブ。この売春クラブはいわゆる
デブ専のお店で、その名も 「巨乳・巨尻専科むっちり」 としょっぱい。

蓼食う虫も好き好きと言うけれど、世に無駄はないとはこのこと。こんなマニアック
な世界でもしっかりと需要供給のバランスがとれていて切ない。女性従業員の平均
体重は100キロ。デブなAV女優を売春クラブで働かせることで、彼女らの出演する
作品の売り上げもうなぎのぼりの一石二鳥なのだとか 。・゜・(/Д`)・゜・。

100キロ女をむっちりとか激ポチャなどとオブラートにくるんで持ち上げるからこういう
事になる。これはもはや相撲取りではないの?ニッセン通販で一般では取り扱いのない
38号サイズを 「ふっくらさん」 向けに出したり、デブ専パブを作ってAV撮影したりと、
世をあげて甘やかすものだから力士女が勘違いして木にのぼる。まわしで十分じゃ!

そしてこの日 「巨乳・巨尻専科むっちり」 と共に流れていたのが、木嶋佳苗の控訴審
初公判のニュースだった。

木嶋佳苗といえばデブ専の権化。世の男たちをその肉体で惑わせ、数億円とも言われ
る金銭を騙し取って殺したとされている。現状、裁判になっている人だけで3名、それ以外
にも被害者がいるのではとささやかれる平成の毒婦だ。

同じ毒女でも林真須美は既婚だったし、福田和子は痩せていた。疑惑の人の顔写真が
初めて紙面を飾った日、佳苗はその容姿で世間を震撼させた。世紀の結婚詐欺師の
正体が、デブでブスで年増という三位一体のトリプルファイターだったというオチ。
上田美由紀といい、世の女結婚詐欺師の顔がおしなべてガチャピンでどどめんなのは
なぜだろう。

吉原のデブ専ソープ、エンペラー東山で働いていた佳苗の源氏名は 「さくら」。
そんな彼女は、悶々とした性生活をブログにつづり、イケメンの恋人に貢ぐ生活を
していた。憧れは叶姉妹。北海道の片田舎から出てきた彼女は、寝技と練炭を武器に
餌食を見つけてはお金を巻き上げ、特別なマッサージを施しながら男たちを練炭で
眠らせていった。

殺人で億単位のお金を手にしてからは、デブ専ソープを辞めてセレブになった。
マンションのペントハウスに住み、カーネリアンレッドのベンツを乗り回すように
なってからも、なぜかヤフオクで得体の知れない取り引きをしたり、2ちゃんねる
で 「あずきババア」 の異名をとる有名人。ゴージャスに憧れる彼女は、代官山の
高級フランス料理学校コルドン・ブルーで習ったパンを、自らのブログ 「かなえ
キッチン」 で披露。ここでは、整形した顎とほんの少しのデコルテをさらして美女を
装い、獲物の男たちを誘っていたという。

今も法廷に現れる度にお色直しをしたり、裁判中に美脚体操をしたり、獄中生活に手紙
をくれる 「ファン」 と称する一般男性との疑似恋愛に余念がないとのこと。全ての
ハンディをちゃぶ台返しで陽転思考できる彼女のポジティブさが時に羨ましい。

考えてみれば、誰あろうこの木嶋佳苗こそがディープなデブ専に光をあてた先駆者
ではないかと思う今日この頃。世の美意識の彼岸にあるデブの世界。彼女は拘置所に
あっても、いまだ世の男性の耳目を集めて止まないのだ。



悪霊島
私は横溝正史の大ファン。

仕事が立て込み疲れて帰った来た日は、コーヒーとお菓子を用意して横溝作品を
開く。勿論、原作ばかりでなく、映像の世界に逍遥するのも楽しみの一つ。特に昭和の
時代、一流の脚本家や監督、そして、贅沢な俳優陣を使って制作された映像美の
世界に浸るのは至福のひと時。夜な夜なアマゾンを訪れては、デジタルリマスター化
されたドラマ版や、東宝、角川、松竹それぞれの映画版を買物かごに入れている。

そんな中、久しぶりにケーブルテレビで見た 「悪霊島」 が凄かった。
鍾乳洞、二大勢力のいさかい、双子といった横溝正史のキーワードを踏襲しては
いるものの、これまで個人的にあまり萌えることのなかった作品だ。

私は確かにこの映画を見たはずなのだ。「鵺の鳴く夜は恐ろしい」 という角川特有の
コピーや、ビートルズの Let It Be を主題歌に使い、話題性たっぷりでヒットした映画。
なのにこれ程まで強烈な内容がなぜ記憶に残っていなかったのか訳がわからない。多分、
あまりにも子供過ぎた私は、目の前で展開される行為の意味が分からなかったのだと思う。
当時はアール(R)指定なんてなかったもの。

主人公は古尾谷雅人。その他、バイプレーヤーに伊丹十三、室田日出男、大塚道子、
佐分利信といった豪華メンバーを配しているものの、今や誰一人として生きていないという
事実。その死因が自殺や原因不明の死で彩られ、Let It Be の使用権が切れて長らく
埋もれていたというから、長く日の目をみることもなく志麻様のことも忘れてしまって
いたのだと思う。

野犬に食い殺されて体が屠殺場と化した岸本加代子や、ダッチワイフのような石橋
蓮司の女装、さらに金田一耕助役、鹿賀丈史の鼻穴などなど。見どころは多々ある
ものの、岩下志麻というたった一人の女優の怪演で他の存在感が全て吹っ飛んで
しまった。

映画 「疑惑」 では、桃井かおり演じる前科4犯の鬼塚球磨子 (おにづかくまこ...凄い
名前だ) と戦う辣腕弁護士役を演じた志麻様。知的でクール、上品で清楚な役柄の
似合う女優だった。

この 「悪霊島」 では、そんな志麻様の体の中に、清楚な 「巴」 と淫乱な 「ふぶき」 の
心が宿っている。二重人格、サイコで電波な彼女の中で、巴とふぶきがせめぎ合い
交互に入れ替わっては次々と殺人を犯していく。

ある日、娘役の岸本加代子が母親の部屋の前を通りかかると、合わせ鏡を見ながら
紅を引いた志麻様が、まさにこれからガバマンふぶきに変身しようとしている。ジロリンと
目の色が変わると、清楚な着物の裾をはだけて志麻様が横たわる。そして、娘の見て
いる目の前で 「あ゛~ っ」 と言いながらオナ◯ーをするのだ。

し、志麻様がオナ◯ー.... щ(゚д゚щ)カモーン

かつて映画 「楢山節考」 で獣姦を繰り返す左とん平を不憫に思った清川虹子が
長らく未使用の女性自身を再利用するシーンで、姥捨てという映画全体の重い
テーマが崩壊した 。・゜・(/Д`)・゜・。 また 「泣いてたまるか」 でストリッパー役の
市原悦子がM字開脚をした時は、さすがにテレビの前で倒れた私。今、考えると
昭和はエロかった。

たとえば清川虹子が獣の代わりにあてがわれても、なんとなくヨゴレで済まされるけど、
あの岩下志麻が文芸作品でオナ◯ーをするなんて。彼女は仕事を選べるし、第一この
映画の監督は志麻様の夫ではないの。

オナ◯ー連発は岩井志麻子 (5時に夢中木曜レギュラー) のようで嫌なのだけど、
そもそも岩下志麻クラスの女優が銀幕でご披露することではないのだ。

その後、洞窟で合体双生児のミイラを抱いた志麻様は、電波ゆんゆんで伊丹十三に
サカって断られるや、「ホーッ」 とバンザイしながら洞窟の竪穴に落ちていく。
何だかもの凄い映画だわ。

ここまでネタバレ進行しておきながら、是非お勧めしたい一本。
くれぐれも覚悟してご覧ください。


朝の風景
いつもより5分程遅れて家を出た私は、駅に向かって走っていた。
ガラス張りの大きなメルセデスのカーディラー。そのショーウインドーに小走りの私が映る。
気ばかりが焦り体がついてこない私の上半身は下半身と完全に分裂、髪が舞い上って
八つ墓村になっている。

この際そんなことに構ってなどいられないのだ。どうしても56分の電車に乗らなければと
角を曲がった瞬間、子連れのヤンママと出くわした。イヤホンで音楽を聴きながらスマホの
メールをチェックしていた彼女の顔は、朝青竜の内館牧子。出会いがしらに 「チッ」 と
舌打ち、私に暴走族のメンチを切りながら子供を引きずっていく。

とりあえずスルーで駅に到着した私は、転げ落ちるように階段を駆け下りる。でもほんの
僅かの差で間に合わず、無常にもドアは目の前で閉まってしまった。すると、エレベータから
飛び出してきたヤンママが閉まりかけのドアに突進、ベビーカーの先端をグリグリとねじ込んで
いる。ドアはバウンドして一旦開いたもののそのまま閉まり、ヤンママとベビーカーを残して
ホームを離れていった。

泣叫ぶ赤ちゃん。あれほどの衝撃でねじ込まれたら本当に怖かっただろうにと思う。そこへ
遅れて駆けてきた母親とおぼしき中年女性に向かって、ゴージャス松野のようなヤンママが
叫んだ。

 「おい見たかよ!これが子連れ女性への差別だよ。ふざけんな!」

首都圏の通勤ラッシュで1000人からの通勤客が乗車する電車一本止めてでも、
赤子を抱える母親は優遇されるべき。自らの子供を危険に晒してでも主張を通したい
彼女は、ホームの駅員さんを捕まえてJR東日本の心構えを説き始めた。すると、それを
見ていた大学生風のカップルが、怒り狂うゴージャス松野を写メに撮っている。そのまま
ツイッターに 「モンスタークレーマー火病なう」 とでも投稿するのだろうか。

1本遅い電車に乗り込んだ私は、今朝出会った人々の民度に思いを馳せた。
ああいう母親に育てられた子供は、きっと歩きながらケータイを見て舌打ちをしたり、
台風で止まった電車を走らせろと駅員に詰め寄ったり、しまむらで土下座写メを撮ったり
する大人になるのだろうかと暗たんとした気持ちになる。

そんな沈黙を破り、次の駅では4人の幼児が登場。おそらく3才ぐらいの男の子3人に
女の子1人。母親たちはおしゃべりに夢中で子供たちを野放しにしている。男の子3人は、
手に手にプラスチックの剣を持ちズブズブとお互いの体を刺しながら、大人には見えない
敵と戦っている。片や女の子は電車の天井に届く程の高さに揺れ動く風船をもっていた。

この風船が、先日私の身にふりかかった阿鼻叫喚を呼び起こした。



その日、会社帰りに無性にケーキが食べたくなった私は銀座で途中下車、お気に入りの
紅茶の店に足を運んだ。ここは内装が凝っていて、細かに仕切られたヨーロッパの民家風
のコンパートメントになっている。むき出しの原木の柱に、漆喰の白壁。いつもの
「お一人様ご案内です」 の声に導かれ席に通される私。オーダーを待つ私の耳に、
遠くからガヤガヤと子供の声が混じった家族連れの会話が聞こえてきた。ああ、あっち
行け!と思う。

基本私はかなりの子供好きだが、一人になりたい紅茶空間や電車の中では鬼となる。
大人しい子は問題ない。しかししつけのなっていないアーパーな子供や、自分が子供で
あることを自覚して大人を試そうとするダミアンはゲンコツだ。

そして嫌な予感は的中。隣の席に4人の家族連れが座った。お婆ちゃんと母親、そして
5才くらいのお兄ちゃんと3才くらいの弟。さすがに銀座だけあって見た目は小奇麗で
上品に見える。サイゼリアのドリンクバーで立ち飲みのジャージ集団とは違う。

安心したのも束の間、お兄ちゃんがヘリウムの風船を持っているのに気付いた私は
恐怖で体が固まった。それは子供の頃、縁日で買ってもらった大きな風船。私はそれが
嬉しくて、屋台の間をグルグルと持って歩いた。そして軒先の電球に触れた風船が私の
頭の上で爆発し、私は気を失った。

それ以来、風船ゴム関係は恐怖の対象でしかない。心底トラウマである。そんな私の
横に、それはそれは巨大な風船がゆらゆらと揺れている。お兄ちゃんはご丁寧にその
風船を店の原木の柱に押し付けてグリグリと上下させている。正気の沙汰とは思えない。
ブブブブとゴムの擦れる音。いつ爆発するかも知れない恐怖に包まれて私はケーキに
手をつけた。いつも通り、どこからむいていいのやらケーキに張り付いたセロファンの
剥き所にイライラしていると、店内の巡回パトロールから帰還した弟が一言。

 「あ、お兄ちゃん僕にもさせて」

そう言って急に走り出す。そのままテーブルの足につまづくと、私に向かってヘッド
スライディングをかけてきた。テーブルのポールに頭を強打して号泣する弟、こぼれた
ローズヒップティーでテーブルの上が真っ赤に染まる。その熱湯が弟君の頭にかからない様、
とっさに大量の紙ナプキンでおさえる私。その時、私の耳元でお兄ちゃんの巨大風船が
爆発した。



ふと我に帰った私は、今、この電車の中でまたヘリウム風船の恐怖にさらされていた。
大人3人がけの席に4人でミチミチに座った子供たちは 「もうちょっとそっちいってちょうー
だい」 などと貧乏ごっこをしている。とりあえず靴は脱がされているものの、どうやらこれ
からディズニーランドに行くらしくテンションがハンパない。その盛り上がりが
ピークに達した頃、急に車内が静まり返り、みんな口をつぐんでしまった。

そっと目をやると、4人ともスズメのように窓に張り付いて一生懸命に外を見ている。電車は
舞浜に近づき、遠くにディズニーシーのプロメテウス火山が見えてきた。どんどんと近づいて
くるディズニーランドを見ていた子供たちが目を輝かせ、小さな声で 「ミッキー、ミッキー」
と呼んでいた。

ああ、ミッキーに会えるのが嬉しかったのね....

ようし、うるさかったのは全部許す!今日一日お母さんとお友達と一緒に
思う存分楽しんでいらっしゃい!

ドタバタの朝の一コマ、結局最後は子供に救われて電車を降りた。



神降臨
デパガ時代に反響があったので、さらに第2弾投下。

デパートには定時見回り巡回がある。専門のガードマンさんが各フロアを巡回して、
不審者や火災をチェック。彼らが制服で売り場を練り歩くことで、万引きや性犯罪防止
の意味にもなる。女子が集うデパートのトイレにはデバガメが欠かせない。

ちょっと油断しているとインターネットの盗撮マーシーとかにアップされて、世の男性
のおかずになるのだ。ガードマンさんは、こうした変態や泥ママ、キチママを相手に
日夜戦ってくれる。一方で、さすがに女子トイレに入れない彼らの代わりに中の
確認を頼まれることもあり、一部女子社員は防犯員の仕事もかねていた。

その日、私は通常通りのシフトでカウンターに入っていた。すると防犯室から内線が
入る。仲良しのガードマンさんだ。

 「今、接客中?頼みがあるんだけど」

その日、消防の査察に加えて万引き対応が2件も入り、店内がしっちゃかめっちゃか
だという。どうやら定期巡回に手が回らないので、私のフロアの男子トイレをチェックして、
検査表に記入してくれないかという。

 「男子トイレ・・・」

さすがの私もこれはちょっとと思い、とっさに同じ売り場のエロつぼねを探す。男子トイレ
の巡回と言えばヨダレを垂らさんばかりに飛びついてくるだろうと売り場を見渡すものの、
こういう時に限って休憩に入っていた。

 「見るだけでいいんですね?」

男子トイレの入り口にたたずみ、大きな声で 「失礼します!」。そっと中をのぞくと
誰もいない。ああ、よかったと思いながら、ふと死角になっている用具入れのコーナーを
見渡す。すると、なぜか床にズボンとパンツが。

 「ん?」

開け放たれた用具入れの個室ドア。その中のモップ洗い用タブの上に、でかい外人が
スクワットをしていた。両手を固く握りしめ歯を食いしばった青年は、おそらく東南アジアから
の旅行者。高さ1メートルほどの流しのへりにまたがり、下半身裸のまましゃがんでじっと
こちらを見ている。

 「・・・・」

ニッコリと笑った彼は片手で股間を隠すと、恥ずかしそうに用を足し続けている。
その後、ガードマンさんが入り、清掃のオバサンが入り、しばらく売り場がドタバタ。
どうやら彼がトイレに入った時は個室が満員で、用具入れの流しを 「和式トイレ」
だと勘違いしたらしい。

トイレ事情は複雑で、たとえば中国や韓国からの旅行者は大に使用したペーパーを流さず
に、そのまま置いておく。あちらではペーパーを流すと詰まるので、汚紙は放置プレイが
平常運転。さらに現物そのものを見たりしたら、ムンクの叫び状態になるのよ。それを放置
すればデパート生命が絶たれるので、定期巡回は是非とも必要になってくる。

若い男が股間をさらしたと聞いたエロつぼねが地団太を踏んでいる。その横でため息を
つく私。あの彼にとって、きっと私はマーシーなのだと思うと切ない。

こうした珍客は外国人ばかりではない。

5階の水着売り場は夏季限定の季節もの。本来は呉服やパーティードレスといった、
一種別世界のショースペース。顧客は、アゲ嬢や風水 (風俗水商売) 女子、そして
なぜだか男たちなのだ。ショーパブ店員、ニューハーフ、ご自宅用のコスプレリーマンや
芸能人などなど。当然のごとく日々の売り場は大変なことになっている。入っている
ショップも、ミスクロエとかあやしい。

キラキラとラメやスパンコール。ひかり物のあでやかなフロアには、誘蛾灯に群がる
蝶に交じって、ガやふんころがしもやってくる。基本女性用で7、9号が主なサイズ
展開なのに、マツコみたいなオカマがやってきて私のサイズがないと吠える。出勤前の
ニューハーフは基本すっぴん。眉無し、ヅラ無しでハゲ散らかした頭のまま、ホット
パンツにキャミソールという姿でフロアを闊歩する。中には、頭に南京玉すだれの
ようなものを巻き付けたり、室伏広治のハンマーのようなものが搭載されている人も
いる。ああでもない、こうでもないと絶叫し、集団ヒステリーさながらでドレスを
選ぶ姿はドリフのコントにしか見えない。

そんなサーカスの一団に交じって、ある日VIPが訪れた。

美川憲一降臨。

大声で話す女装軍団が、一瞬水を打ったように静まり返る。フロアの真ん中をお付き数名
と練り歩く美川憲一。ゆっくりと商品を見回しながら、あれ、これ、と指をさす。彼の周囲では、
必要最小限の単語で会話が成り立っているように見えた。

彼に付いて商品を選んでいたコンシェルジュが、計10着程の買い上げ衣装をカウンターに
のせて、お直しの話をしている。エロつぼねがマネージャーらしき人に 「支払いはカード
か現金のどちらでごぜえますか」 などと岡っ引きのようになっている。芸能人美川憲一を
目の前にテンパっているらしい。すると、いきなり美川本人が鋭く一言、

 「現金でっ」

芸能人が来るのは珍しいことではない。特にこのデパートは若手に人気があった
ものだから、ミーハーな私は 「アイドルが来たよ」 とか、 「噂の有名人カップルが一緒に
ブランドバッグを買って行ったよ」 などという同僚の目撃談が心から羨ましかった。

一方、この私はといえば、呉服、パーティードレス + 水着などという訳の分からない
カテゴリーのフロアに押し込められて、日々、熟女、オカマとコスプレおやじの日替わり
メニューに甘んじていたのだ。

そして待ちに待った最初のVIPが、美川憲一というオチだった。



デパガ時代
大学を卒業してから数年間、私はデパートに勤めていた。

私の人生に沈思黙考や熟慮断行などという四字熟語は存在しない。
新卒のお給料が高く、週休二日に加えて1ヵ月の連続休暇がとれるというのが入社の
決め手。ブランド品に囲まれてお休みたっぷり、それでお給料がもらえるなんて最高!
ぐらいに世間をなめていた。

実際は、人に頭を下げて奴隷のように仕える日々。ルイ14世ではないが 「デパガは
オバサンの下僕」 であるという事実を知ったのは入社間もなくのこと。しかも敵の
オバサンは、8割を超える女子社員の身内にも山盛りに生息していた。平日休み
の職場では行き遅れることしばしば。社内は加齢とともに凄味を増す、はく製のような
干物で溢れかえっている。海千山千、幾多のモンスタークレーマーをなぎ倒してきた
百戦錬磨のお局が闊歩する世界。その神経はハンパない。

アイロンの折り目も初々しい当時の私。緊張の面持ちで、新入社員研修一週目の配属
先に急いでいた。2つ上の先輩トレーナーが従業員用エレベーターの中で口を開く。

 「お客様に気持ちよくお買い物をしていただくため、清掃は心をこめて丁寧にね」

優しくほほ笑む先輩。ふとエレベーターが止まり、40代のお局女子がエレベーターの
カゴを揺らしながら乗り込んで来た。

デーブスペクターの嫁か、はたまた叶姉妹アニキ似の原型をとどめない整形顔。
その顔の上には、欧陽菲菲のビッグヘアーが茶髪で載っている。豊満なボディーに
しゃべりの雰囲気はあき竹城という圧迫感の連続。

ウブな私は、まるで珍しいものでも見るかのようにマジマジと彼女を見つめてしまった
のだと思う。先輩が小さく目くばせをして目をそらすように諭した。見てはいけないもの、
一瞥で塩の柱になるわよ、と語る先輩の瞳。するとまたエレベーターが止まり、今度は
主任がのってきた。顔中にニベアを厚塗りしたかようなテカリとダチョウのヒナのような
毛髪。三宅裕司激似の小柄で固太りな彼は、社内で有名なエロおやじだ。エレベーター
に乗り込むやいなや、あき竹城を見つけて一言。

 「よっ、スケベねーちゃん」

アラご挨拶ね、と朝からけだるいあき竹城が迎え撃つ。場末のチーママのようなこの
安っぽさは何なのだろうと思っていると、三宅裕司が両手を胸の前にあげて初動体勢
に入るや、そのままあき竹城に突進した。

 「オレのセクハラに耐えられるかっ」

そう叫びながら、あき竹城の両乳房を思いっきりわしづかみ。

 「お、おうっ。 よくも新入社員の目の前で」

と言って主任をはねのける竹城。彼は私に目を向けることもなく、

 「えっ、じゃ今日のセクハラ返しは無しかよぉ」

と言う。エレベーターは何事もなかったかのように5階に到着。私は誰にも目を合わさない
ように売り場へと走る。セクハラ返しとは、ソフトボールのピッチャーのように手をグルグル
回転させてながら、アンダースローで男の股間をキメるあき竹城の必殺技であると、後日、
先輩が教えてくれた。

水着売り場では接客を任された。あまりサイズに関係がなく、トータルコーディネートや
セットアップといった高等テクニックも必要がないというのが理由。優しい先輩とあき竹城
が売り場を離れて、私が一人になった時、そのカップルはやってきた。

男子は身長が高く眉毛がない。千と千尋の神隠しのカオナシで、全身から激しいヲタク臭を
発射している。女子は汚ギャルで、アゲ嬢のように頭に何かを盛っていた。髪をお団子に
した上に、ついぞ見たことのないフルーツの飾り、その上にさらにゴールドの羽飾りが歩く
度に揺れ動く。それは泥棒を撃退するため、ロバの上にイヌ、ネコ、ニワトリがのった
ブレーメンの音楽隊のように。女子は迷うことなく吊るしのバーゲンコーナーにいくと
蛍光色の3着を選び、そのまま試着室に入っていった。

水着の試着は基本、服の上から。じかに肌につけるものであればこそこれは常識で、もしも
の時のため下の方にはナイロンガードがつけてある。ただ、世の中には常識が通じない人も
いるので試着には十分気をつけてね、と先輩にアドバイスを受けていた。

ただ新人の私はブレーメンの音楽隊におじけづいて何も言えない。おずおずと近づくと、
息をひそめて試着室のカーテンを見つめていた。売り場には私とカオナシがたたずむのみ。
すると汚ギャルが 「ジャーン」 と言いながらカーテンを全開にした。

そこには盛り髪にデブで貧乳の彼女が、爽やかな白の水着を身につけて、手を左右に
広げたまま立っていた。ショーツの横からはおびただしい量のアンダーヘアーが飛び出し
ている。両サイド + ギャランドゥ щ(゚ロ゚щ) 彼氏に見せようとバンザイをしながらターン
を決める彼女の脇の下からも、容赦ない剛毛がビヨヨンと。汚ギャルのあまりにあられも
ない姿に慌ててカーテンを閉める彼氏に、どうなのよ!などと逆ギレしている。
じか履きだ.....ご丁寧に下着すべてを脱いだ上、当たり前のように全身をピッタリと
食い込ませての試着。何もできない私の前で、結局3着すべてのフィッティングが完了した。
つかつかと歩み寄り、私に水着を手渡す彼女。

 「これ。 あとこっちはいいです」

どうやら最初の白が気に入ったようで、あとの2着は戻してくれとのこと。白は透ける
ので 「一緒にパットやアンダーショーツはいかがですか (周囲の迷惑じゃ)」 というと、
隣にたたずむカオナシに向かって、

 「はかない方がセクシーじゃん、ね? いりませんっ」

と言う。にやける男を尻目に私の頭にとある情景が浮かぶ。真っ白な砂浜を遠くからグラビア
アイドルのように走ってくる汚ギャル。その頭にはブレーメンの音楽隊を載せ、水着はアッパー
ガフガフ、下はピチピチ、スローモーションで彼に手を振る。脇の下から剛毛を飛び出させ、
砂浜に横たわるどざえもん。見事に透け倒した水着からは中身の具がすべてお見通し!
ショーツの三方を取り囲むギャランドゥが見るものを恐怖のどん底に突き落とす図。

 「自宅用なんで、ラッピングいいです」

汚ギャルを見送った私は、彼女が残していったクシャクシャの水着を裏返す。するとナイロン
ガードがはがされたショーツの真ん中に何かが滲んでいた。涙目になって報告する私に
向かって先輩が一言。

 「きっとナイロンガードのガバガバが嫌だったのよ」

そこですか?

一日の終わり、お風呂の中でデパガ初日の洗礼が走馬灯のように蘇る。エレベーターで
ボインパンチをおみまいする主任。そして、ソフトボール上野キャプテンのように股間をキメる
あき竹城。その横には白い水着の女が毛をはみ出させてたたずんでいる。

 「あと何日続けられるんだろう」

遠い目をしながら、一日も早い転職を考え始めていた。


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